VCにとっての「ヒット」とは
ベンチャー・ビジネスを理解するために、野球ほど役立つものはない。野球嫌いの人のために、まずは「打率」の定義から始めよう。
打率とは、選手のヒット数を打数で割った割合である(四球は分母に含まれないことは承知しているが、このアナロジーでは関係ない)。つまり、打率3割の野球選手は─終身打率がこの数字ならば、選手は野球殿堂入りする─10回打席に立つごとにヒットを3回打っている。
優れたVCは、10回の打数で約5回ヒットを飛ばす(打率5割)。VCの「ヒット」とは、VCが当初企業に投資した額を上回るリターンを得ることだ。一見したところ上々の結果だと思われるかもしれないが、じつはそうではない。それどころか、これは成功を左右するほどの問題ではないのだ。
ほとんどのVCにとって、打数の分布は次のように見える。
2.投資の20〜30%は、「シングルヒット」か「ツーベースヒット」
3.投資の残り10〜20%──これが、VCにとってのホームランだ。
以下で詳しく述べよう。
1.投資の50%は「十分に役目を果たさない」。これは、投資の一部または全部を失うことを意味する、丁寧な言い方だ。ちょっと考えてみてほしい。VCは投資の半数を完全に誤り、投資家から預かった資金の大半、または全額を失う結果に終わるのだ。
その他の職業なら(野球は例外かもしれない)、50%の業績しか挙げられなかったら、別の仕事を探すことになるだろう。ところがわたしたちVCときたら、失敗を褒め称えているようなものだ。
2.投資の20〜30%は、引き続き野球のたとえを用いるなら「シングルヒット」か「ツーベースヒット」だ。全額を損してはいないが(これはめでたい)、数回投資して1回しかリターンがないことになる。
暗号通貨に500万ドル投資して、1000万〜2000万ドルのリターンがあったとする──それほど悪くない。しかし、「十分に役目を果たさない」投資の50%を考慮に入れれば、VCはやはり厄介な状況に陥る。投資額の70〜80%が、1ドル当たり約75〜90セントのトータルリターンしか挙げていないことになる。これでは成功とは言えない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら