VCの世界でわたしたちが本当に気にかけるのは、本塁打率だ。つまり、投資の10倍以上のリターンをVCが得る頻度のことだ。わたしたちはこれをホームランと見なしている。
ちょっと数学的に考えてみれば、VCは多くの間違いを犯していることがわかるだろう。本塁打率1〜2割を達成しさえすれば、歴代最高の野球選手たちを上回る打率5割に届かなくてもかまわないのだ。
それがこの業界の現実である。最もパフォーマンスの良いベンチャー・ファンドと業績不振のファンドの違いは、打率ではなく本塁打率なのだ。実際に、最高の業績を挙げる企業は、業績が振るわない企業よりも打率が低い場合が多い。
彼らは、打席に立てば三振かホームランのどちらかの、野球の強打者のようなものだ。
危険を冒さずして、勝利を収めるベンチャー・ファンドにはなれないことがわかる。このビジネスに参入したいなら、頑丈な胃袋が備わっているか、ずっと胃薬のお世話になるかのどちらかしかない。
その他の投資は「関係ない!」
たとえばアクセル・パートナーズは、ごく初期のラウンドでフェイスブックに投資したことで知られている。当時、フェイスブックの価値はおよそ1億ドルとされた。フェイスブックが株式を公開するまで、アクセルが株式を保有していたとしよう。
フェイスブックが株式公開したとき、時価総額は約1000億ドルだった(わかりやすくするために、計算を単純にしている。アクセルの最初の投資資金が、次回以降の資金ラウンドで希薄化されたかどうかについてはここでは考えないことにする。また、公開市場でのフェイスブックの最初の数日、または数週間の取引についても、考えないようにする)。
大雑把に計算すれば、アクセルは投資資金の1000倍の儲けを得たことになる。これは間違いなくホームランに分類されるだろう。アクセルのそのほかの投資成果はどうだったのだろうか? これはひっかけ問題だ。答えは「関係ない!」ということになる。
1度の投資で1000倍も儲けたら、その他すべての投資で成果が出なくてもかまわない。何と言っても最高のパフォーマンスのファンドがあるのだから。それがアクセルのしたことだ。
アクセルはじつは同じファンドで、アドモブ(AdMob)、ゼンソース(XenSource)、トゥルーリア(Trulia)など、ほかにも素晴らしい投資をしていた─じつに壮観だ。
けれどもそのどれもが、フェイスブックの投資のべき乗則のリターンのあとに楽々手にした儲けだった。
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