韓国の女性たちが熱烈に支持した「主人公」の正体 社会現象となった「2016年のソニョン」

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広告におけるジェンダー表現への配慮について世界中で関心が高まっている。多様な女性の姿を次世代に見せる責任とは(写真:LeoPatrizi/iStock)
世界中で広告におけるジェンダー表現への配慮について関心が高まっています。広告クリエイターのキム・ジナ氏は、広告にフェミニズムの要素を入れたフェムバタイジング(フェミニズム+アドバタイジング)の先駆け的存在。韓国初のフェムバタイジングはどのような経緯で成功したのでしょうか。
新刊『私は自分のパイを求めるだけであって人類を救いにきたわけじゃない』より一部抜粋してお届けします。このエピソードから、男性中心の社会が抱える、ユーザーとビジネス決定者の乖離や、固定観念を打ち破るヒントが見えてきます。

女性の視点を広告に入れる

広告代理店をふりだしに、広告プロダクションの代表を経てフリーになるまで、数えきれないほどたくさんの広告アイデアをひねりだしてきた。

フェミニズムに目覚めてからは広告アイデアに女性主義の視点を反映しようとがんばってきた。しかし、自分をプロとして育ててくれた広告業界が「ソフトに女を殺す道具」として強力に作用していたという事実を消化するのはラクではなかった。

とりあえずアイデアを出すときは、お母さんはごはんを作る、お父さんは外で仕事をしてお金を稼ぐ、みたいな固定的な性別役割分業をひっくり返したり、女の敵は女、女はお荷物、女はおバカといった決まりきった女性嫌悪の設定を排除した。女性を性的な対象とするアイデアを出すことが習慣のようになっていたが、それも封印した。

会議の場では性差別的だったり女性嫌悪的だったりの広告例を挙げ、何が問題かを訴えた。いまどきこんなことをしていたら大変なことになる。商売ができなくなるよと。そう言いつつ、それとなく自分のアイデアを売り込む。だがリアクションはだいたいこう。「それじゃ広告的なおもしろさがなくなりそうですけど?」「スポンサーがあまりいい顔しないと思います」女性主義的なCMを1本テレビで流すための私の努力は、毎回虚しく終わるのだった。

そんななか、広告代理店D企画の制作チームから、化粧品CMコンペのプロジェクトを手伝ってほしいとの連絡が入った。コンペプロジェクトの主人公であるI化粧品は、高品質だが認知度と好感度がそれに届いていない状況。路面店のコスメショップでは中小ブランドの競争がますます熾烈になっており、I化粧品には対策が必要だった。

うちの化粧品は品質がいい、使ってもらえればわかる、みたいなのんびりしたアプローチではとても太刀打ちできない。どうしたらあまりコストをかけずにI化粧品のメッセージを届けられるだろう? 実のところプロの広告屋でも解決が難しい課題だった。キックオフ会議のあいだじゅう重苦しい雰囲気が続いた。そのときふと、I化粧品の社長である女性実業家が私と同じコピーライター出身だという話に興味を引かれた。ITブームに乗って広告会社を飛び出し、2000年のはじめに女性のためのコミュニティサイトを作った人物? 芽が出そうな種を1つ見つけた気分だった。

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