27歳で急死「天才ロッカーたちの礼賛」に異議あり 才能と可能性を備えた人間だから傑作が生まれた

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早すぎる死の原因はロマンティックでもセクシーでもない(写真:ViktorCap/iStock)

有名なエピソードの定義が「どんな人でも知っていて当然なこと」であるなら、「27クラブ」はそれにあたらないのかもしれない。事実、この名称を聞いてもピンとこない方は相当数存在するだろう。

しかしロックンロールの歴史のなかで、これは重要なキーワードでもある。

名だたるミュージシャンの相次ぐ死がきっかけ

きっかけは、1969年以降のわずか2年間に名だたるミュージシャンが相次いで命を落としたことだった。ローリング・ストーンズの創始者であるブライアン・ジョーンズ、ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックス、そしてドアーズのジム・モリソン。

はたして偶然なのか。彼らが選んだライフスタイルの論理的帰結なのか。ドラッグや心の病のせいなのか。絶えず大衆の視線にさらされているプレッシャーだったのか。それともすべての要素が混じりあっていたのか。いずれにせよ、人々はそこにパターンを見いだしはじめた。大衆の想像力のなかで、単なる相関関係が因果関係へと転じていった。都市伝説が生まれ、文化的な固定観念になり、そうして「27クラブ」が生まれた。(「イントロダクション」より)

決して喜べるようなものではないこのクラブの成り立ちを、『才能のあるヤツはなぜ27歳で死んでしまうのか?』(森田義信 訳、星海社新書)の著者、ジーン・シモンズ氏はこう記している。

名前からわかるように、アメリカを代表するロックンロール・バンド、キッスのベーシスト兼ヴォーカリスト。ポール・スタンレーとともに同バンドを生み出したオリジナル・メンバーである。

独特のメイクやパフォーマンスで知られるキッスは派手なバンドであり、そのあり方はロックンロールというフォーマットをわかりやすい形で代弁しているとも考えられる。

だがバンド内で最も目立つ存在であるシモンズ氏は、酒も飲まず、ドラッグもやらない人物でもある。本書ではそのような立場から、多くのミュージシャンたちの命を奪ったドラッグを真っ向から否定し、「27クラブ」についての持論を展開している。

その意図は、「音楽産業の内外で活躍して27歳で世を去ったさまざまな文化的存在を語り、理解の筋道を見つけ、共感を示すこと」だという。根底にあるのは、次のような考え方だ。

これは私の見かただが、27クラブというコンセプトは、若くして死ぬこと――成功のてっぺんでドラッグと不摂生にまみれて死ぬことがカッコいい、などと讃えるものであってはならない。27クラブはそういう文脈で語られることが多いが、私はこれまでずっとそんな考えを声を大にして否定してきた。ドラッグをやり、不摂生を続けている人だって、必ずしもそんな過大評価には同意しないだろう。(「イントロダクション」より)
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