インタビューフォームは本来、医療従事者向けに作成されているが、一般の人でも厚労省所管の「医薬品医療機器総合機構」(PMDA)のウェブサイトで閲覧できる。このほか、「添付文書」や認可された経緯が書いてある「審査報告書」なども掲載されている。こういった公的なデータをもとに情報発信し、そのうえで接種を判断するのが望ましい姿だろう。
また、厚労省に報告された副反応の情報も、厚生科学審議会の「予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」の資料として公開されているし、その資料をもとに専門家がどのような議論をしているかがわかる議事録も掲載されている。この議事録は、誰でも読めるような内容であり、関心のある人はぜひ、健全な議論がなされているかなどチェックしてみるとよいと思う。
しかし、実際は、新型コロナワクチンの接種をすでに受けた大人でも、PMDAや厚労省が公開しているデータ等を自身の目で確かめることなく、テレビや新聞の情報だけで判断した人もいるはずだ。日本では、長年にわたり、患者が医療について何も考えずに医師に言われた通りしていればいいという土壌が長く続いたために、医療情報の共有の文化がまだまだ希薄だ。大人ですら自ら正しく判断できているのか疑問なのに、学生や子どもたちはもっと翻弄されてしまっているのではないか。
大人も医療消費者の視点に立ち戻る必要がある
――子どもの保護者はどう判断したらよいですか。
子どもが大変な被害を被った「サリドマイド事件」や「薬害エイズ」の反省を受けて、1999年に厚労省の敷地内の前庭に「誓いの碑」が建立された。建立された8月24日にはそれ以降、毎年、厚労大臣が「薬害根絶の誓い」を続けている。また、2011年からは全国のすべての中学校3年生に「薬害を学ぼう」という教材冊子が配布され、「子どもたちを将来、薬害の被害者にも加害者にもしない」という取り組みが進みつつある。
ただし、薬やワクチンに関して医療消費者としての視点での教育は、まだ十分に進んでいないと感じている。先ほど話した添付文書やインタビューフォームは公開されているものの、医療従事者向けだから一般の人からすればわかりにくい。「難しそうだから、よくわからないだろうから」と思い込んで自分で調べたり考えたりしなくなってしまわずに、判断する大人もこの新型コロナワクチンを受けるかどうか、医療消費者の視点に立ち戻る必要があるのではないかと思う。
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