――これまでの薬害の歴史を踏まえると、新型コロナワクチンでもリスクが軽視されていると?
私は医薬品で「安全で、有効性がある」と断言してしまうのが、いちばん怖いと思っている。国も製薬企業も専門家も間違うことがあるというのが薬害の反省だ。安全性や有効性の判断、ベネフィットがリスクを上回っているかどうかの吟味は慎重になされなければいけない。
過去の薬害の事例でいえば、肺がん治療剤の「イレッサ」が挙げられるだろう。「副作用が少ない『夢の新薬』」とうたわれ、そのようなプロモーションが広がった。しかし、発売後から副作用による死亡が相次ぎ、添付文書の副作用欄の改訂がされ、決して「副作用の少ない夢の新薬」ではなかった。
同様に、今回のワクチンは、まったく新しい仕組みのメッセンジャーRNA(m-RNA)ワクチンであり、未知の部分が多いはずだ。それだけに、安全性も効果も慎重に見極めていく必要があるにもかかわらず、今回のワクチンをさも安全と言い切ってしまう専門家が多いことに違和感を持っている。現状は肯定も否定もできないから、本来ならさまざまな情報収集をしながら接種を進めていく段階だろう。
医療も薬もワクチンも100%完璧に安全なものはなく、不確実性があるから難しいものであるはずだ。だからこそ、国民に考える材料や機会を与えずに妄信的に接種を進めようとさせるのは、かえって信頼を欠くことになるのではないだろうか。
専門家が下した結論に従うことが「科学的」?
――情報発信のあり方として、どのようなものが望ましいですか。情報の受け手側は、どうしたらよいでしょうか。
科学的思考を求めながら、何も考えずに専門家が下した結論に従うことが「科学的」であるかのような論調も少なくない。いろいろな意見を持つ専門家がおり、セカンドオピニオンも必要だ。きちんと根拠を示し、論理的にも飛躍がないか、専門家の意見を吟味できるだけのリテラシーを身に付ける必要がある。そのためにも、できるだけありのままの1次情報が国民に伝えられていくことが大切だ。
例えば、新型コロナワクチンで承認されたファイザーのワクチン(販売名:コミナティ筋注)の「医薬品インタビューフォーム」には、「承認時において長期安全性等に係る情報は限られている」と記載されている。また、モデルナのワクチン(販売名:COVID−19ワクチンモデルナ筋注)についても、「短期的な有効性と安全性が示された」という表記にとどまっている。
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