ワクチン接種「子供にも絶対」という風潮への疑問

同調圧力で思考停止せず各人が冷静に判断を

既往症(病歴)などから一定の警戒ができる中高年と違い、子どもは副反応の予測がしにくい。また、子どもや若者のほうが、アナフィラキシーをはじめとするアレルギー疾患も多く、リスクがより高い可能性がある。

日本は過去に、子ども向けのワクチン接種で苦い反省がある。厚生省(現厚生労働省)が1989年4月に導入したMMR(はしか・おたふくかぜ・風疹)の新3種混合ワクチンで、死亡したり、後遺症を残したりする「無菌性髄膜炎」が報告されて大きな社会問題になった。結局、導入から5年で定期接種は中止となり、1000人以上の子どもがこのワクチンによる健康被害の認定を受けた。

新型コロナワクチンの学生や子どもへの接種では、河野太郎・新型コロナワクチン担当相が「夏休みに打ってもらえたらいい」と発言した。結局、文部科学省は学校集団接種を推奨せず、各自の判断を尊重する見解を示したが、もし文科省が推奨してしまっていたら同調圧力を生み、子どもたちは接種を拒否するのが難しかっただろう。

「国が勧めているから」でいいのか

――ただ、子ども・若者への接種については、日本では厚生労働省、海外でも保健・規制当局が「リスクよりもベネフィットのほうが高い」との見解を示しています。懸念を訴えることで、反対に接種の機会を奪ってしまいませんか。

十分な情報がない中で、全否定や全肯定の極論の議論をするつもりはない。ワクチン忌避を誘いたいわけでもなく、非科学的な反ワクチン論争に乗るつもりもない。ただ、個々人がワクチン接種の判断を「国が勧めているから」という理由に依存してしまうのは、問題ではないだろうかと問いかけたい。 国はこのワクチンにはどのような効果と副反応があるのかの説明を十分に国民に示し、国民がその説明の内容に納得した場合に「接種する」という選択肢を選べるようにすべきだ。

一般に、ワクチンの効果や副反応は、感受性の個人差があるだけでなく、人種、年齢、性別、持病などの属性による違いに注視する必要がある。それらの違いにも触れずに、すべての国民をひとくくりにして「リスクよりもベネフィットのほうが高い」と断言するのは疑問が残る。 とくに子どもや若者に対して、本当にそう言い切れるだろうか。

医療で大切なのは、患者に治療のリスクとベネフィットを具体的に説明し、本人が納得して同意する「インフォームド・コンセント」だ。昔はインフォームド・コンセントがきちんとされず、情報が健全に提供されなかったために、「薬漬け」などと呼ばれる過剰な医療も社会問題になった。

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