国土交通省が推す「PFI」の活用、現場に早くも漂う疲労感

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日本総合研究所の石田直美主任研究員は、「最近はPFIでVFMを出すのが難しくなっているうえ、企業側も儲からないPFIへの失望が深まっている」と指摘する。

横浜市の場合、受注する民間事業者も08年入札の3プロジェクトは、いずれも1社(グループ)しか応札がなく、競争性の観点からすると、好ましい現象ではない。

PFIは通常の公共事業の発注と比べて、仕組みづくりに手間がかかるうえ、「発注者側の『安くするため』という意識が強すぎる」(経団連)。本来は事業のリスクに見合うリターン(利益)を民間企業が得てしかるべきなのに、公共事業で民間企業が収益を得ることはけしからん、という意識が強く、民間企業がPFIを敬遠する一因にもなっている。

「わざわざ民間企業に資金調達させるより、国や自治体が調達したほうが低金利なのに、なぜ手間をかけてPFIに仕立て上げる必要があるのか」(自治体関係者)。そんな根本的な疑問の声も多く聞こえてくる。 

 だが、PFIの本質は、民間が負うことのできるリスクは相応のリターンとともに民間に切り出し、官が最低限負うべき役割を再定義することにある。PFIの資金調達コストが高いのも、公共事業の本当のリスクが国や自治体の信用力の陰で覆い隠されているからにすぎない。

その公共サービスを官が手掛ける必要はあるのか。民間でできることは民間に任せ、官でないとできない事業のみ税金を使って行う。その線引きを明確にしておかないかぎり、PFIもあだ花と化すだろう。

(撮影:尾形文繁、梅谷秀司 =週刊東洋経済2010年6月12日号)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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