日本とコロナ、改革すべきは医療制度と財政政策 欧米よりコロナ被害は小さいのに対策が非効率

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実際、主要国の「自宅滞在時間」と「実質GDPの変化率(2020年平均)」には負の相関が認められる。日本の政府・自治体が採用した制限が比較的緩やかであったことで、人々の行動変容の程度は他国に比べて小さく、経済活動の直接的な抑制も小さかった可能性を示唆している。

(外部配信先では図表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

ところが、2021年に入って日本では、各国に比べて感染者数が少ないのに、たびたび医療が逼迫し、緊急事態宣言を余儀なくされている。その原因の一つは医療提供体制の問題である。

ICUが不足し、機動性と地域連携でも劣る

先進国の中でも日本の人口当たり病床数が極めて多いことはよく知られている。にもかかわらず、全国の重症者数が千人に近づくと、特定の地域で深刻な医療逼迫が起こりやすい。医療逼迫は一部の医療従事者への負担集中のみならず、死亡リスクの増大につながりかねず行動制限を迫られてしまうため、経済へも多大な影響を与える。日本で医療が逼迫する理由についてはさまざまな要因が考えられる。

第1に、ICU(集中治療室)が少ないことだ。病床数に占めるICUベッド数は、ドイツで8%、米国で7%であるのに対し日本は2%にすぎない(OECD統計)。日本の病床数は人口千人当たり13.0床でドイツの8床、アメリカの2.9床などに比べて多いにもかからず、ICU病床数は人口10万人当たり5.2床、ICUと病棟の中間的な重症度の患者を対象としたハイケアユニット等を含めても13.5床で、ドイツの29.2床の半分にも満たない(厚生労働省統計)。

また日本の集中治療専門医の数は、人口当たりでドイツの7分の1と少ない(ドイツのコロナ対応については、NIRA総合研究開発機構のレポート『ドイツのコロナ対策から何を学べるか』を参照)。

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