日本とコロナ、改革すべきは医療制度と財政政策 欧米よりコロナ被害は小さいのに対策が非効率

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第2に、ICUへの病床転換や地域内外の病院連携、医師の配置の機動性に問題がある。感染症は地域によって大きく状況が異なる。第4波における大阪府の5月初旬の状況は極めて深刻で、人工呼吸装置で治療をできるICUに余裕はなかった。

これに対し、例えばドイツでは今回のコロナ感染症に対応するために2020年8月以降に1万床のICUを追加、人口10万人当たり40床の水準まで病床転換と増設を進めた。スウェーデンでは地域間で病院が機動的に連携し、専門が異なる医師にも教育を施してICUでの治療に当たらせた。

病院の機動的な連携や対応は、病院の運営主体の違いもあると思われる。日本では民間病院比率は81.6%、民間病床数は71.3%(厚労省、2019年)であり、EUの民間病床比率33.9%(2014年)と大きく異なる。

スウェーデンの場合は国立病院が中心で、国が中央管理することで各病院の病床使用状況を時々刻々把握し、自治体の枠を超えて患者の緊急搬送も指示したという。日本でも緊急時の柔軟な病床転換、診療所と病院の連携、病院間連携、医師等の機動的配置を可能にする体制構築の必要があることは明らかである。(スウェーデンのコロナ対策については、東洋経済オンライン記事『誤解されたスウェーデン「コロナ対策」の真実』参照)

IT化の遅れも大きく響いた

第3に、医療データの入手可能性、即時性等の観点で評価したIT化のレベルにおいても、OECDの分析によればデンマーク、韓国、スウェーデンなどが圧倒的に高く、日本は先進国の中で遅れている。

今年に入ってからの英国の機動的なワクチン接種は、行動制限の緩和を可能にすることで経済回復に奏功した。英国ではワクチン開発と確保の行動計画策定を2020年の早い段階からスタートし、スピーディーな承認体制を構築して、同年10月には規制を緩和して教育や訓練で接種者を医師以外にも広げた。また、カルテデータから基礎疾患の人を特定して接種を奨励し、予約もすべて電子的に行われた。

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