監査役は機能?積水ハウス「地面師事件」に残る謎

調査報告書の公表に1人反対した関西検察OB

ところが、誰の目にも明らかな重要報告に、小林が無反応を貫き、上級庁にも報告しなかったことは、検察組織に幸いした。事件の主だった責任追及は、大阪地検内部に留められたからだ。小林の無反応は、大阪高検、最高検へと責任が波及することを防ぐ役割を果たし、これが検察組織の中では小林の功績となったと見る向きもある。

大坪や佐賀が懲戒免職となる中、免職を免れた小林は、辞職して弁護士登録する。彼を迎え入れたのが、大物検察OBの土肥だった。小林のその後の経歴には、土肥の存在がはっきりと見て取れる。

2013年には、阪急阪神ホテルズの「食材偽装問題」を受けて同社の第三者委員会の委員長を務めた。また17年には積水ハウスの監査役に就任。さらに、関西電力でもコンプライアンス委員会のメンバーに就いた。いずれも土肥が監査役を務めた企業だ。関西電力から見れば、土肥と通じる小林が、経営陣に忖度する報告書をあげてくることは、十分に期待できることだっただろう。

問題が公になり、痛烈なバッシング

だが、世論は甘くはなかった。問題が公となり、痛烈なバッシングを浴びた関西電力は、第三者委員会を発足させ、新たに調査報告書が作成された。八木や岩根らは、責任を明確に指摘される。

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さらに経営陣の善管注意義務違反を主張する株主からの提訴請求を受けて、利害関係のない弁護士による取締役責任調査委員会が立ち上がった。

彼らは八木や岩根らに「善管注意義務違反がある」と判断し、著しく失墜した信用を回復させるために生じた広告等の費用や、調査費用などの損害を与えたとする調査報告書を提出した。関西電力は、八木ら旧経営陣に対して、19億3600万円の損害賠償訴訟の提訴に踏み切る。

手ぬるい調査報告書を主導し、ましてや経営陣を擁護する「所感」までつけた小林は、法曹人としていま何を思うのか。

積水ハウスに話を戻そう。実は、小林が地面師事件の調査報告書を一部、骨抜きにしたことも分かっている。調査報告書には「原案」があり、そこには阿部の「重い責任」について、具体的に5つの根拠が示されていた。しかし、小林は「ここまで踏み込むべきではない」と、ここでも調査対策委員会のメンバーの中でただ1人反対した。最後まで折り合わず、結果、原案に示されていた5つの根拠は削除された。

私は調査対策委員会のメンバーも含む、複数の関係者からこの事実を確認し、小林に見解を求めた。小林は所属する法律事務所の職員を通じて、「守秘義務があるので回答できません」と伝えてきた。

関西電力といい、積水ハウスといい、隠蔽体質が極めて深刻なのは、経営者と彼らに迎合するヤメ検たちの共存関係が背景にあるからではないか。小林は、今も積水ハウスの社外監査役を務めている。(敬称略)

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