監査役は機能?積水ハウス「地面師事件」に残る謎 調査報告書の公表に1人反対した関西検察OB

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関西には、隠然としたヤメ検弁護士たちのサークルが存在している。彼らは検事を退官すると、企業の監査役などに就くことが多いが、その職の斡旋は、大物ヤメ検によって差配されてきた。企業不祥事は、彼らの手によって社内で密やかに処理されることもある。その一端が露わになったのが、関西電力のトップ経営陣にまで及んだ「金品受領問題」だった。

関西電力高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、森山榮治(故人、2019年3月死亡)から、会長の八木誠や社長の岩根茂樹ら75人に対して、総額3億6000万円の金品が渡された。

森山は原発マネーを背景として関西電力からも仕事の発注を受け、それを差配していたことから、金品受領は、会社法の特別背任罪、収賄罪も視野に入る汚職事件だった。公益性を強く帯びた電力会社には、あるまじき事件だが、会見に立った八木や岩根らは「返すつもりだった」「返還を申し出ると怒られるので怖かった」「だから預かっていた」と、子どもじみた言い訳を繰り返した。

批判を受けて八木と岩根は辞任したが、マスコミがかぎつけるまで、関西電力はこの事実を一切、公表してこなかった。それは、社内で立ち上げられた調査委員会が、違法性に言及しなかったからだ。

調査委員会の委員長に指名された小林

問題発覚の発端は、2018年1月から始まった金沢国税局の税務調査だ。高浜町の建設会社の調査に着手した国税局は、関西電力への資金の流れを把握する。これに慌てた関西電力は、金品を返還し、社内で調査委員会を発足させる。委員は3人の弁護士と、副社長、そして2人の常務執行役員で構成された。この委員長に指名されたのが、小林敬だった。

調査委員会は、同年9月11日に調査報告書を提出するが、中身は責任の所在が曖昧なものだった。内容を一部引用してみよう。

「外形上、森山氏等から、対応者に対して、多額の現金・商品券、高額の金貨・スーツ仕立券付生地等を渡されており、その内容(金額・回数等)は、明らかに良識ないし社会的儀礼の範囲を超えている」

「一方で、対応者は、基本的には、森山氏から渡された金品は預ったものであり返却する、という認識であったが、前述のとおり、森山氏に返却の申し出を行うと激怒されるのが常であり、森山氏との関係を悪化させると原子力事業運営に悪影響を与えるという懸念がある中で直ちに返却を押し通すことは困難であった」

そして金品を受け取った者の責任の追及を脇に置いて、こう結論付ける。

「会社あるいは組織として対応をするという決断を、会社がなし得なかったと言わざるを得ず、その点は非難されなければならない」

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