監査役は機能?積水ハウス「地面師事件」に残る謎 調査報告書の公表に1人反対した関西検察OB

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小林が関西電力の調査委員長として作成した調査報告書は、監査役会に報告されたが、その後取締役会には報告されなかった。その理由が、問題が公になった後に関西電力が設置した第三者委員会の「調査報告書」に示されている。

監査役たちはこう証言した。

法曹資格を有する社外監査役である土肥孝治氏にも監査役としては取締役会へ報告しなくてよい旨を確認した又は確認したと常任監査役の八嶋氏(筆者注:八嶋康博元副社長。後に善管注意義務違反で関西電力から1億7000万円の損害賠償を請求された)を通じて聞いた……(以下略)

また、土肥は「八嶋氏からコンプライアンス上問題であるけれども違法ではない以上取締役会へ報告しなくてよいかと提案の形で聞かれたことに対し、それはまずは会長、社長といった執行部が検討し判断すべきことという趣旨で賛同した」と主張している。土肥に金品受領の問題の悪質さを重視し、コンプライアンスを正そうという意識があったとは言い難い。

小林が調査委員長に選ばれたのも、不祥事の事実関係を明らかにして襟を正すことよりも、経営者の立場に影響を与えずに、落としどころを探してくれるからではないか。彼にはそう見られても仕方のない過去があった。

大阪地検特捜部の「証拠改ざん事件」で懲戒処分

小林が大阪地検検事正となった2010年、大阪地検は「証拠改ざん事件」に揺れた。厚生労働省局長だった村木厚子が無罪を勝ち取った、あの事件だ。大阪地検特捜部により、証拠のフロッピーディスクが捜査のストーリーに見合うように改ざんされるという、捜査の信用を根底から覆す前代未聞の不祥事だった。

証拠改ざんに加わった主任検事や、大阪地検特捜部長だった大坪弘道、同副部長の佐賀元明が逮捕される中、2人の上司として改ざんの報告を受けていたのが小林だった。これにより、小林は懲戒処分を受け、辞職に追い込まれる。

寃罪を生みかねないきわめて悪質な改ざんにもかかわらず、小林は意図的ではなく、過失による「データ改変」としか報告されなかったからと、上級庁に報告しなかったという。しかし、意図的であろうがなかろうが、証拠が改変されてしまうことは、罪に問われた人の一生を左右する極めて重大な問題だ。

2013年9月25日に大阪高裁で言い渡された、大坪、佐賀の両被告の控訴審判決は、小林の行動にも言及している。両被告の代理人を務めた弁護士の郷原信郎が言う。

「判決は、『重大事件における最重要の証拠であるデータに手を加えたという重大な不祥事との認識を持って、被告人両名に対し、真相の解明を急ぐなど迅速な対応を指示するとともに、上級庁にも直ちに報告すべきであった』と、大阪地検の最高幹部としての小林氏の責任を厳しく指摘しています」

次ページ小林が無反応を貫いたことが検察組織に幸い
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