監査役は機能?積水ハウス「地面師事件」に残る謎 調査報告書の公表に1人反対した関西検察OB
調査報告書の公表が実現しなかった理由
調査対策委員会は、和田が失脚したことで、問題に直面する。公表が前提だった「調査報告書」は、新執行体制の下で「社内報告」とされ、阿部ら4人が「公表しない」と言い出したからだ。
しかし、これはガバナンス上、きわめて問題だった。というのは、調査対策委員会の発足は、取締役会の承認を受けた2017年9月7日にプレス・リリースされ、積水ハウスは「本件(筆者注・地面師事件)の発生に影響した内部要因等の原因を究明し、再発防止策等の協議・検証を行うこと」を内外に約束しているからだ。
そのリリースには、委員となった社外監査役の篠原祥哲、小林敬、社外取締役の三枝輝行、涌井史郎のメンバーも公表されている。社外役員である彼らは、経営を監視する責務を負っている。
しかも、調査報告書には阿部が取引に関与したありさまを問題視して、「重い責任」が指摘された。阿部が「公表しない」と言うのは、恣意的な判断と捉えられる。これを見過ごしては、ガバナンスを担う社外役員のレピュテーション(評判)リスクに直結する。
和田が言う。
「特に調査対策委員会の委員長の篠原さんは、阿部の行いに『筋が通らん』と怒っていた。当たり前や。そこで調査対策委員会は、独自に調査報告書を公表することを検討していました」
だが、委員会による調査報告書の公表は実現しなかった。監査役の小林敬が「取締役会が公表しないというのに、その決定を飛び越して、公表するというのはいかがなものか」と反対したからだ。
取締役会の判断で急遽発足させた調査対策委員会の独立性については、社内で規定があるわけではない。1人でも足並みがそろわなければ、委員会として、公表を求めることは難しかったのだ。
私はなぜ小林1人だけが反対したかに興味を持った。調べてみれば、小林は検事正を最後に、検察官を退任したヤメ検弁護士だった。
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