政府に「試されている」フランス人の戸惑いと憂鬱 突然の「衛生パス」導入に国民は揺れている

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今のところ、フランスではPCR検査は無料ですが、今年の秋にはお金を払わなければならなくなります。つまり、まともな社会生活を続けたければワクチンを接種するよりほかないわけです。選択肢はほかにありません。つまり、フランス政府がそうはっきり宣言せずとも、ワクチン接種は事実上「国民の義務」となるのです。

多くのフランス人は大統領の方針に非常に動揺しており、衛生パス発表からわずか数時間以内に、ワクチン接種を求める人が接種会場に大勢つめかけました(これは政府にとってはうれしい悲鳴でしょう)。

バケーションに子どもと出かけられない?

これまでも書いてきましたが、フランス人にとって夏のバケーションはとても大切なもの。多くの人が楽しみにしています。しかし、衛生パスが導入されることになれば、ワクチン接種を終えていない子ども(若年層の向けのワクチン接種はごく最近始まったばかりで、2回の接種を完了している若者はわずか)と、バケーション先で一緒にレストランにいけない、という事態も起きてしまいます。

例によってフランス政府は抑圧的な姿勢を見せており、ルールを守らないレストランにはなんと4万5000ユーロ(約580万円)の罰金が課されるほか、1年間の懲役が下されることもあるということです!

フランス人は今、「社会規範」とは何かを完全に試されている状態にあります。フランス人が最も大事にしている自由を脅かすことに、本当に価値があるのでしょうか。医療従事者などのワクチン義務化はフランス人でも同意する人が少なくありません。しかし、衛生パスについては議論の余地があり、ラファエルさんのような国民は「選択の自由」を求めてデモを行おうと準備をしています。

ラファエルさんは両親からワクチンを打たないことは、今後の勉強や生活に支障をきたす可能性があると、接種を強く勧められているといいます。ワクチンを打たないことはわがままで、国民全体のことを考えていない、とも。ワクチンや衛生パスは家族内での対立も生んでしまっているのです。

マクロン大統領自身は、「衛生パスはけっして、差別を生むことが目的ではない」と話していますが、「打たない選択」をした人が、より不便な生活を強いられるのは目に見えています。

今後さらなる変異株が現れ、コロナもインフルエンザと同じように共生していくものとなるのであれば、ワクチン接種の選択の自由は絶対的に必要と同時に、打つ側と打たない側がそれぞれの立場を理解しあうようにしなければいけません。

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