こうした前向きな進化の背景にあるのは、ワクチン接種の拡大です。ヨーロッパの他国に比べて接種開始が遅れたうえ、強力な反ワクチン運動がありましたが、その後接種ペースが加速。7月15日現在、フランスでワクチン接種を2回とも終えた人の数は約244万人と人口の約34%に上ります。また、5月21日に発表された世論調査によると、18歳以上のフランス人の65%がワクチン接種を希望しています。
ポール・Lさん(30)は当初ワクチン接種を躊躇し、「予約を3回もキャンセルしたり、インターネットでワクチンについていろいろ調べたりしました」と言います。が、「結果的にはワクチンを接種していたほうが世界を旅するのが楽になることがわかったほか、変異型のデルタ株が怖くなったので、昨日1回目の注射をしたところです」。
一方、23歳のラファエルさんは、「この先どうなるか結果がわからないのに、こういうものを身体に注射することはできません。僕は若いので新型コロナで死ぬ可能性はほとんどない。なぜこの年齢でワクチンを打たなければならないのか……」と否定的です。
物議を醸す「衛生パス」の導入
ようやく自由を取り戻しつつあるフランスですが、7月12日にマクロン大統領が発表した2つのことが国民を大きく動揺させています。1つは、病院や診療所、高齢者・障害者施設で働く医療従事者や介護スタッフ、高齢者や基礎疾患がある人と接触するすべての人に対して、ワクチン接種を義務付ける、としたこと。9月15日以降、ワクチン未接種の場合は罰則が科される見通しです。
これはフランスで極めて重要な自由の原則に反するもの。すでに多くから批判や反対の声が上がっており、パリなど各地でワクチン強硬策に対する反対デモが開かれています。
そしてもう1つ大きな物議を醸しているのが、「衛生パス」の導入。8月からレストランやカフェ、ショピングセンター、飛行機などを利用する際に、ワクチン接種を証明する「衛生パス」を提示しなければいけない、というものです。
これまでも、フランス政府は新型コロナの方針を急に決めることがしばしばあり、公表の遅れからすぐに実生活に適用できない、ということがありましたが、衛生パスもまさにそれです。
パスは確かにコンサートや劇場、飛行機や長距離列車に乗る場合は有用かもしれませんが、日常生活の中でレストランに行ったり、ちょっとした買い物をしたい場合には不便が生じます。
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