デジタル庁が失敗しないために必要な3つの視点 理想と道筋を示して「デジタル敗戦」の先を行け

✎ 1〜 ✎ 63 ✎ 64 ✎ 65 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また理想を達成するための道筋を描く必要もあった。もし「安心安全」が道筋の中で重要であれば、その達成要件をある程度定量的に示し、十分に説明して実行していれば人々の納得感は高まっただろう。そして関係者がオリンピック憲章に書かれていることの現代的な意味を深く考え、体現できていれば、異なる受け入れられ方がされたかもしれない。

これから始まるデジタル庁にこの3つの指摘を当てはめてみよう。理想を理論と思想によって支えられるだろうか。理想に至るための道筋を描けるだろうか。そしてデジタル庁は答えに生きることができるだろうか。

デジタル庁の理想とは?

デジタル庁の理想は「1人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」である。この理想の社会像を鮮やかに語り、その理想を支える理論的・思想的な基盤を説明すること、そしてそれを達成するための道筋を説得的に語る必要があるだろう。さらにデジタル庁は答えを生きることが求められる。つまりデジタル技術を活かして生産性を高め、プロセスの透明化を行い、データを用いた政策を立案するといった理想的な行政を庁内で体現しなければならない。

そのためには、旧態依然としたガバナンスの刷新も必要かもしれない。周りから「なぜデジタル庁だけが優遇されるのか」という圧力も生まれるだろう。とても難しいことに違いないが、それを「難しい」と諦め、周りのやり方に合わせるのではなく、一歩でも先を行く姿を見せてほしい。デジタル庁が理想を体現することで、その優れたやり方が民間企業や他省庁にも伝わり、新たなデマンドも生まれてくるはずだ。

かつて第2次世界大戦後に日本は欧米という理想を夢見て、長足の進歩を遂げた。「デジタル敗戦」の後、デジタル庁の設立を前に、私たちの目の前には多数の反省材料が用意されている。この機会を「理想を掲げ、新たなデマンドを作り出す」力へとつなげる好機として捉えたい。

(馬田隆明/アジア・パシフィック・イニシアティブ上席客員研究員、東京大学FoundX ディレクター)

地経学ブリーフィング

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

2023年9月18日をもって、東洋経済オンラインにおける地経学ブリーフィングの連載は終了しました。これ以降の連載につきましては、10月3日以降、地経学研究所Webサイトに掲載されますので、そちらをご参照ください。
この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事