デジタル庁が失敗しないために必要な3つの視点 理想と道筋を示して「デジタル敗戦」の先を行け

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デジタル庁が乗り越えなければならない最大の障害は、長年の改善により最大限の性能を引き出された旧来の技術や、それを支える制度だともいえる。

こうした状況で新しい技術を導入しようとするならば、選択肢はほぼ2つしかない。新しい技術でしか解決できない課題に対して新しい技術を導入するか、もしくは技術が洗練していくか、である。

前者は課題をきちんと見つけていくこと、デジタル庁の場合は行政サービスの利用者である国民や、システムの利用者である公務員のデマンドをきちんと把握することで対応できる。デジタル庁がサービスではなくプラットフォームを作る場合は、そのプラットフォームを活用するソフトウェア開発者に話を聞く必要があるだろう。

ユーザーのニーズを発見し、俊敏に対応するために

これらを実現するためにはデザイン思考やアジャイル開発の方法論など、ユーザーのニーズを発見し、俊敏に対応するための手法を学ぶ必要があるだろう。単に開発手法を学ぶだけではなく、柔軟なソフトウェア開発方法が採用できるような発注や予算の仕組み、人材登用の制度や発注者の評価システムの見直しも必要だ。

デジタルならではのデマンドもある。たとえばデータプラットフォームを行政が整備し、新たな公共財としてのオープンデータを提供することで、新たなデマンドを生み出すことも可能かもしれない。そのときにはデータガバナンスをどうして整備していくかの議論も必要になる。さらにはデジタルがさまざまなインフラに組み込まれることにより、サイバーセキュリティの重要度が増し、安全保障という観点でのデマンドや制度変更の要望も新たに出てくるだろう。

汎用的技術は、仕組みや制度などのガバナンスのイノベーションがあって初めてその性能が活かされるという指摘もある。デジタル庁にはデジタル技術を十全に活かすためのガバナンスイノベーションを牽引する役目も期待したい。

一方、後者の道、技術を洗練させるためには、実際にユーザーに利用してもらうことが必要である。つまり少しでも導入されなければ洗練もされない。しかし十分に洗練されていなければ導入もされない。このような膠着状態において、新たな技術を採用してもらうにはどのようにすればよいのだろうか。

その1つの答えは、その技術の社会実装による最終的なインパクトや理想をきちんと示すことである。

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