デジタル庁が失敗しないために必要な3つの視点 理想と道筋を示して「デジタル敗戦」の先を行け

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なぜインパクトや理想が大事なのか。それは課題が「理想と現状のギャップ」だからである。理想がなければ課題もなく、そこにはデマンドも生まれない。

逆に言えば、明白な課題がないのであれば、理想を示して課題を提起し、そこからデマンドを生起させるというやり方があるのではないだろうか。これまで社会を変えてきた社会起業家やスタートアップは、まさにこうしたやり方で新たなデマンドを掘り起こしてきた。

なぜ日本社会にデジタル技術が必要なのか

デジタル庁でいえば、なぜ日本社会にデジタル技術が必要なのか、社会実装されることによって達成される理想は何なのか。それを語ることで、理想と現実のギャップが明るみに出て、新たなデマンドが生まれ、新しい技術を受け入れてくれる人たちが出てくるのではないだろうか。

ただし理想を提示するときには注意点が3つある。

1つ目は、その理想がどのような理論や思想のもとに成り立っているかを説明することである。思想的な基盤がなければ、理想は単なる思いつきでしかない。理論がなければ、共感だけでしか理想は共有されない。共感は人を巻き込める手法だが、一方で「その思いに共感できる人にしか届かない」という限界がある。多くの人を巻き込む理想には、共感以外の手法、つまり理論が必要だ。

2つ目に、理想に至るまでの道筋を示すことである。実現性のある道筋がなければ、掲げた理想はただの妄想でしかない。この道筋でなぜ理想が達成できるのかを論理立てて説明することが求められる。また道筋を歩んでいくための資源の拠出も必要だ。

3つ目に、理想を答えとして出すだけではなく、その答えを生きることである(この言葉は湯浅誠『つながり続ける こども食堂』から用いた)。理想と道筋を示すだけでは説得力が足りない。前に進むためには、語る人こそが率先して模範を見せる必要がある。

東京オリンピックはこの反面教師として使えるかもしれない。本来であれば、オリンピックが目指すべき理想を示し、その理想を支える理論や思想を語る必要があった。その骨格があれば『震災復興』から『新型コロナウイルスに打ち勝った証』『子供たちに夢と希望を与える大会』と、理想が二転三転するのも避けられ、スポーツへの共感を持たない人たちも巻き込むことができたのではないだろうか。

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