意外と多い「高田馬場」築50年超のシブいビル巡り ロータリー周辺では4件のビル再開発が進行中

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高田馬場では、この駅前広場の周りばかりでなく、早稲田通り沿い、BIG BOX脇の戸山公園方面に向かう坂道沿い、山手線の線路西側の繁華街“さかえ通り”周辺などにも60〜70年代築の“シブいビル”が数多く見つかる。

写真左が三慶ビル、右が大輝ビル。どちらもBIG BOX脇の坂道沿いにある(写真:筆者撮影)

BIG BOX脇の坂道には比較的大規模な商業ビル、オフィスビルが並び、大輝ビル、三慶ビルなど、アーチ型や長方形を型抜きしたようなプレキャストコンクリートの外壁や華やかな面格子、鉄筋コンクリート造の重量感を強調した外観デザイン、戦後モダニズムを思わせる水平垂直感を強調した建物と、各種味わい深いデザインを堪能できる。

 さかえ通りの宝来ビルは、近未来志向のデザインが今は新鮮に映る(筆者撮影)

まさに、シブいビルの宝庫である高田馬場。しかし、都心の好立地であるがゆえ、これからどんどん、そんな愛すべきビル館は建て替えられていくことだろう。

ドアや階段に残る「50年前の味わい」

今、街を歩いている多くの人々には、視線レベルにある1階のファストフードやコンビニ、ドラッグストアといった店舗しか視界に入っていないだろう。そこでちょっと視線を上に向けると、60〜70年代築の時代とともに趣を増したシブいビルの姿が目に飛び込んでくるはずだ。

ビル入口の押しドアのドアハンドル、階段のデザインなども、約50年前ならではの味わいのあるものが残っていたりする。

そんなビルで営業を続けている、地権者が営む古くからの店、個人経営の個性的な店の存在も貴重だ。再開発や世代交代によってこれからますますそんな店は減っていくはず。

古くからそんな街や建物に親しんできた世代にも、それらをエモい、新しいと感じる若い世代にも、今後失われていってしまうこの50年の歴史を持つ街並みの価値に気づいてほしい。今がまさに、高田馬場のシブいビルを楽しみ、味わうべき時なのだと。

鈴木 伸子 文筆家

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すずき のぶこ / Nobuko Suzuki

1964年生まれ。東京女子大学卒業後、都市出版『東京人』編集室に勤務。1997年より副編集長。2010年退社。現在は都市、建築、鉄道、町歩き、食べ歩きをテーマに執筆・編集活動を行う。著書に『中央線をゆく、大人の町歩き: 鉄道、地形、歴史、食』『地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩』(ともに河出書房新社)『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトル・モア)などがある。

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