「2050年の中国」フランスの予言者が見据える未来 歴史人口学の権威エマニュエル・トッドに聞く

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──専門の家族構造から見た、中国社会の特徴とは。

家族構造の専門家として、これまで中国の民主化をまったく信じてこなかった。中国の家族構造は、強い権威に基づいた共同体家族構造であり、同時に強い平等の価値観も持っている。同じ家族構造カテゴリーに属するほかの国などと比べても、中国はその特徴を強く備えている。

また、権威と平等の価値観は共産主義の基本的な価値観でもある。そのため、中国で共産主義が成功した。

この家族構造があるからこそ、中国では権威主義と、「ネオ・全体主義」と私が呼ぶものが生き延びたと考えられる。

「中国が世界を支配するというのはありえない」

──50年までを見据えたうえで、中国について考えられるシナリオを教えてください。

まず、中国が世界を支配するというのはありえないと思っている。また、中国の高齢化はさらに深刻化していくだとか、それに伴って生産年齢人口が減少する、成長にもブレーキがかかる、などというのは一般論としては簡単に言える。

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しかしそれを超えたところでの予見となると、中国にはまだまだ不確実な側面が多すぎる。中国が直面している、少子高齢化という人口危機が、いったいどれほど深刻なものになるのかはまだわからないというのが正直なところだ。

日本やドイツなどが人口減少という危機に直面したとき、日本は生産の一部を中国などに移したり、ドイツは移民を受け入れたりしてきた。しかし中国のとてつもない人口規模を踏まえると、同じような解決策は通用しない。

──巨大な人口規模のため、社会が変化に柔軟でないと。

不確実にしている要素として、中国の社会システムの硬直化、権威主義的な側面の台頭、そしてある種の愚かさが挙げられる。

あるイギリスの経済学者がロシアの社会システムについて、「構造的に導き出される愚かさ」と表現したことがある。中国を脅かすものは人口の落ち込みに加え、全体主義的で権威主義的な官僚システムという構造自体がもたらす、規模の大きな愚かさでもある。

しかし、この点を数値化するのは非常に難しい。だから今は謙虚な態度ではっきりと、「中国の将来についてはわからない」と言うべきだと思っている。

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林 哲矢 東洋経済 記者

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はやし てつや / Tetsuya Hayashi

日本経済新聞の記者を経て、ハーバード大学(ケネディスクール)で修士号。『週刊東洋経済』副編集長の後、『米国会社四季報』編集長。

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