「同質集団」CIAによって見逃された9.11の兆候 当時CIA職員は高い割合で中流階級出身だった
多様性が皆無だった当時のCIA
9.11のテロ攻撃による悲劇は本来なら回避可能だった。この点について、アメリカの情報機関に対する批判は正しい。しかしCIAが危険な兆候を見逃したのが原因だと言うのはどうだろう? そうした批判は「後知恵バイアス」(前回記事参照)の影響に惑わされている。
CIAにとって、危険な兆候は明らかではなかった。現在CIAを批判するいくつかの団体にとっても、当時はおそらくそうだっただろう。皮肉なことにそうした集団も画一的なのだから。多様性の欠如は世界随一の情報機関をも弱体化させた。多様性に富んだ集団なら、アルカイダのみならず世界中の脅威に対してもっと深い洞察力を発揮できただろう。考え方の枠組みや視点の違う人々が集まれば、物事を詳細かつ包括的に判断できる大きな力が生まれる。
CIAの職員は驚くほど高い率で中流階級出身だ。金銭的な苦境も、迫害も、過激思想に触れることも、そのほか諜報活動に知見をもたらしうる経験をほぼしていない。これらはどれも多様性に富んだチームを築くうえでは貴重な要素だ。
しかしCIAという組織にはそれが欠けていた。みな同じ枠組みで物事を見ていた。これは決して白人・プロテスタントのアメリカ人男性への批判ではない。どれだけ優秀でも、同じ特徴の者ばかりを集めた多様性に欠けるチームでは、集合知を得られず高いパフォーマンスを発揮できないという話だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら