「同質集団」CIAによって見逃された9.11の兆候 当時CIA職員は高い割合で中流階級出身だった
事実、9.11のかなり後ではあったものの、CIA内部から辛辣な発言が飛び出している。諜報部門の元副部門長カーメン・メディナは、就任当時は上層部に上り詰めた数少ない女性の1人だった。しかし彼女が在籍した32年の間、何度も多様性を求める声を上げたもののほぼ徒労に終わっていたという。国家安全問題専門のニュース討論サイト『The Cipher Brief』に掲載された──注目すべき内容であるにもかかわらず、ニュースなどではほぼ取り上げられなかった──インタビュー記事で、彼女はアメリカの諜報機関が犯した史上最大級の失敗の核心をついた。
彼女はさらに続ける。
「異なる意見や視点、経験や背景などについて真剣に考慮すれば、それまでより深く正確に世界を把握することができるはずです」
しかし、たとえアフガニスタンなどから発せられた危険なサインをとらえ、アルカイダのネットワーク(工作員が活動していたのは25カ国以上)に潜入して捜査を開始していたとしても、当時のCIAではどの道うまくいかなかっただろう。CIAの分析官と同様、現場の捜査官にも多様性が欠けていたからだ。
アフガニスタンの言語を話す捜査員はゼロ
諜報専門家のマイロ・ジョーンズはこう指摘する。CIAには中国語、韓国語、ヒンディー語、ウルドゥー語、ペルシア語、アラビア語を話せる分析官がほとんどいなかった。これらの言語を話す人口を合計すると世界人口の約3分の1にも当たる。スタンフォード大学国際安全保障協力センターの共同所長、エイミー・ゼガートによれば、2001年の捜査官候補生のうちこうした非ロマンス語が堪能だったのは2割のみにとどまっていた。1998年時点でも、パシュトー語(アフガニスタンの主言語の1つ)を話す捜査官は1人もいなかった。
これらの状況は9.11に関する調査委員会の不可解な報告内容を裏付ける。「真珠湾攻撃以降アメリカ政府が何十年にもわたって入念に開発してきた奇襲攻撃の察知・警告システムは、失敗に終わったのではない。そもそも実行されなかったのだ」。世界でもっとも資金をかけて組織された情報機関が、スタート地点に立ってさえいなかったのである。
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