太るアフリカ!健康の大問題は飢餓より「肥満」 家庭訪問でわかった急激に生活がよくなる予兆

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糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、がんといった、いわゆる慢性疾患(非感染症疾患)です。これらはアフリカで大きな問題になっていて、ケニアは国家ビジョン「Kenya Vision 2030」の中でその具体策を明示しています。

このビジョンの中には、住宅の充実や、製造業の拡充、と並んで、ヘルスケアが重点施策の1つとして、中でも大きなポイントが生活習慣病対策になっています。

ケニアでは、脳梗塞や心筋梗塞になっても、救急車が駆けつける制度がありません。人間ドックや定期検診もまだほとんど普及していません。一方、寿命は延び、がんや生活習慣病の患者が急速に増えてきており、人々は気をつけ始めている。それが、フィットネスブームにつながった要因の1つかもしれません。

そしてヘルスケア領域から、続々と注目のベンチャー企業が出てきています。ケニアの民間の救急車配車プラットフォーム「Flare」、ナイジェリアの血液専門デリバリーサービス「LifeBank」、ナイジェリアでスタートしたネット専業の医療保険会社「Reliance HMO」、西アフリカの電子医療記録/EMR(Electronic Medical Records)プロバイダーで独自電子カルテを提供している「Helium Health」、ケニアの検査専門センター「VitalRay」などなど。中には、シリコンバレー発や外国人が率いている会社もあります。

アフリカのヘルスケア領域には、大きなビジネスチャンスが潜んでいるのです。

アフリカを平均で見ても意味がない

ケニア、ルワンダの大卒初任給は、それぞれ約350ドル、約250ドル(2019年推定)。3万7000円から2万7000円。日本では1960年代のレベルです。これが日本では1972年に6万円を超え、1990年代に18万円台に到達します。

改めて感じるのは、日本がいかに急激な成長を遂げていき、急激に豊かになったか、です。30年ほどで、大卒初任給は6倍ものスケールになっているのです。もちろん物価の上昇もあります。ただ、残念なのは1990年を境にまったく上昇がみられないことです。

日本は30年ずっと横ばい。まさに日本経済のこの30年間が、どのような状況にあったかを、はっきり示しています。先進国と比べても、アメリカは同期間で約2倍になっているなど、日本だけが独り負けしている状態です。

アフリカの大きな課題の1つは、貧困をなくし、世界との差をどう埋めていくか、というところにあります。中国やインドを見るまでもなく、経済発展なくして貧困からの脱却はあり得ません。アジア型の、若く安い労働力を生かした産業から成長するというのも1つのモデルです。エチオピアの安い労働力を生かした縫製業はその代表例です。

アフリカには、もちろんケニアやルワンダ以上の大卒初任給の国も多くあります。アフリカ全体を平均で見ることはとても難しく、意味をなしません。世帯年収で1000万円以上の人もいれば、ほとんど自給自足に近い農村暮らしの人もいます。

実際、エジプトだけを見ても、世帯年収が日本の会社員平均を超えている人たちが13%もいます。カイロだけで見れば37%です。

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