ベンツより高級「マイバッハ」3000万円のニーズ ベンツ以上ロールス未満の価格帯に見出す勝機
ちなみに、今回のメルセデス・マイバッハはまったくの新型モデルではなく、2代目モデルだ。初代のメルセデス・マイバッハSクラスが日本に導入されたのは2015年2月のこと。価格は2200万円からであった。
さらに、その初代メルセデス・マイバッハの前にも、マイバッハの前を持つモデルが販売されていた。それが2002年9月発売の「マイバッハ57」と「マイバッハ62」だ。価格はおよそ4000万~5000万円。57と62は全長の違いとなり、文字通りに全長は57が約5.7m、62が約6.2mだった。エンジンは、どちらも5.5リッターのV12だ。
このマイバッハ57とマイバッハ62は、現在のメルセデス・マイバッハと異なり、オリジナルの車体を用いた専用車種であり、価格帯も1ランク上を狙っていた。端的にいえば、ロールス・ロイスをライバル視した車格と価格帯となっていたのだ。
ところが、このオリジナルシャシーのマイバッハは、うまくいかなかった。ブランド誕生から10年が経つ直前となる2011年に、ブランド廃止がアナウンスされている。実際に日本で2002年から2011年までの10年間で販売されたマイバッハは164台(日本自動車輸入組合調べ 車名別の推移)にとどまる。一方で、同時期のロールス・ロイスの販売台数は453台であった。
ちなみに、マイバッハが廃止となりライバルのいなくなったロールス・ロイスは、その後、さらに販売を伸ばしており、2012~2020年の9年間では1659台も売っている。対ロールス・ロイスという点で、オリジナルシャシーのマイバッハは完敗であったのだ。
競合ではなく“棲み分け”という戦略
振り返ってみれば、メルセデス・マイバッハは、マイバッハよりも車格を1ランク落とすことでロールス・ロイスとの競合を避けたモデルといえるだろう。
素のメルセデス・ベンツ Sクラスが1000万~2000万円を中心価格帯にするのであれば、メルセデス・マイバッハは、その上の2000万~3000万円台を担う。3000万~6000万円というロールス・ロイスとは異なる価格帯で、棲み分けを狙っているのだ。
筆者のような庶民からすれば、1000万円クラスの素のSクラスでさえ、雲の上の存在となるが、実際のところ、そのうえにはメルセデス・マイバッハがあり、さらに上にロールス・ロイスが君臨している。世の中は広いというほかにない。
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