ポルシェが「車を売らない説明のプロ」を育てる訳 来店のハードルを下げ専門的な知識を伝えていく
世界中のスポーツカーの最高峰ブランド「ポルシェ」。最近でこそ「カイエン」「マカン」といったSUVや4ドアの「パナメーラ」を目にすることも増えたが、長年続く「911」「ケイマン」「ボクスター」といったスポーツカーは、一目見るだけでポルシェだとわかる風格と迫力を漂わせる。
そんなポルシェの新車を展示するディーラーやショールームは、いったいどんなところなのか。自動車に少しでも興味がある人だったら、一度は訪ねてみたいという気になるだろう。
あのポルシェでも来店のしやすさに腐心
しかし高級なブランドであればあるほど、仮に経済的に充分なゆとりがあったとしても、ビシッと決めて日々勝負をかける営業マンが待ち構えた自動車ディーラーには、ハードルの高さを感じて踏み込めないという人が少なくないはずだ。
あのポルシェであっても、そのことを課題だと捉えている。SUVや4ドアのラインナップが充実し、完全に電気だけで動く新型車「タイカン」も加わったいま、これまでのユーザー層、つまり“いつかはポルシェ”とすでに心に決めた人々とは、違ったターゲットに訴えかけていくことが不可欠であるからだ。
そんな現状打破のため、ポルシェのドイツ本社がコンセプトを主導し、世界中で展開し始めたのが「Porsche NOW」(ポルシェ ナウ)という期間限定のポップアップストアだ。日本での第1号店である「Porsche NOW Tokyo」(ポルシェ ナウ トウキョウ)は、東京地区で5店舗のポルシェ正規販売店を運営するEBI GROUPが昨年7月に江東区有明でオープンした。
Porsche NOWは2019年末から世界展開を開始し、現在はドイツ、ドバイ、ブラジル、カナダ、台湾、ギリシャ、ブルガリア、日本の計8カ国で開設されている。店内外に広がるウッドフロアや接客カウンターがナチュラルカラーとされるなど、従来のディーラーとは異なる空間デザインを採用し、誰でも気軽に立ち寄りやすい雰囲気が醸し出された。デジタル化にも力を入れ、車両の内外装の組み合わせを試すカーコンフィギュレーターや、サーキットドライブのシミュレーションを、VR(仮想現実)を通じて体験できる。
施設内で主役としてスポットライトを浴びているのはポルシェ初の量産EV(電気自動車)であるタイカンだ。Porsche NOW Tokyoのオープニングに際しては、日本での正式発売前だったタイカンの実車をドイツから3台持ち込んで展示したほか、発売後にはいち早く試乗車を用意。150kW級の出力を備えるポルシェターボチャージングステーションが設置され、急速充電にも対応した。
そうして招き入れた潜在カスタマーにタイカンの魅力をより強く、正確に伝えるため、Porsche NOW Tokyoには「Porsche Pro」(ポルシェ プロ)と呼ばれるスタッフが在籍する。彼らの特徴は“クルマを売らない”ことである。説明することに専念するのだ。
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