ポルシェが「車を売らない説明のプロ」を育てる訳 来店のハードルを下げ専門的な知識を伝えていく

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4ドアモデル「パナメーラ」も最近よく見かけるモデルだ(筆者撮影)

――今後はどのような展開を?

「ポルシェ プロとしてレベルアップするために、ポルシェジャパンと連携し、日々の業務における発見を報告したり、より高度な研修の内容を提案したりしています。昨年3月にはドイツ本社で研修を受ける計画もあったのですが、新型コロナウイルスの影響で中止になりました。最終的には、ポルシェ プロというタイトル自体に高い付加価値を持たせられるよう、研鑽に励んでいきたいです」

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せっかくポルシェ・ディーラーを訪れたのだから、現在の販売状況についても聞いてみた。

コロナ禍で高級車がよく売れているというニュースを耳にするとおり、ポルシェでも引き合いは非常に増えており、ほぼすべてのモデルで品薄が続いているそうだ。自動車産業全般におけるサプライチェーン混乱の影響もあり、具体的には5月生産の車両の入荷が、4〜6週間ほど遅れているという。

契約から納車まではどのモデルも半年以上を要する。いまや世界販売台数の63%を占めるSUV「マカン」「カイエン」と、4ドアモデル「パナメーラ」、新工場で生産されている「タイカン」は、半年から8カ月で入手可能だ。

むしろ少数派となった2ドアスポーツカーの「911」「ケイマン」「ボクスター」は納期が長くなっており、中には1年かかるケースもある。とくに、特別仕様の限定車や「911 GT3」のようなスペシャルモデルは、発注しても納車時期が読めないほどだという。

また、昔から日本には「911カブリオレ」「911タルガ」など、911のオープントップ・モデルが入荷しにくいとのこと。日本よりも南ヨーロッパや、アメリカの西海岸・東海岸といった安定して高い需要がある地域が優先されるらしい。

中古ポルシェ・オーナーが苦心すること

新車が入手しにくいことを受けて、ポルシェの中古車相場は全般に高止まりしたままだ。これは、ひとたびポルシェを所有できれば、資産価値が失われにくいことの裏返しでもある。

一方、2014年にマカンが発売された頃から顕著であった販売台数の急増に対し、整備工場のキャパシティー拡大が追いついていないことは否定できない。筆者自身、中古ポルシェのオーナーとして経験したことだが、ディーラーでの点検・整備に際しては余裕を持って予約しておくことが求められる。

ポルシェの購入にあたっては、納期やメンテナンスなど現実的側面について早めに検討することが肝心だ。そういったことも含め、ポルシェ プロに気軽に相談できるPorsche NOW Tokyoの運営は、今年8月末までの予定である。

田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、THE EV TIMES編集長

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たなか せいじ / Seiji Tanaka

自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。EVニュースサイト「THE EV TIMES」編集長および、モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長を務める。

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