流行語「飛ぶぞ」がZ世代に強烈に支持された背景 「マイルドヤンキー」文化の知られざる変化

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事例③Bloom Vase
TikTok上でBloom Vaseの曲にあわせて踊る若者(写真:筆者提供)

Bloom Vase は、3人組のHIPHOP(ラップ)クルーだ。2019年頃からYouTubeなどで曲を出し始め、2020年9月にはSpotify Viral Top50の4位にランクインしている。TikTok上でBloom Vaseの曲が使われ、若者の間でバズった。

たとえば、友達とBloom Vaseの曲に合わせてけだるそうに踊り、チルな雰囲気を演出する動画をTikTokで投稿することなどが流行した。従来の攻撃的な雰囲気を持つHIPHOPの曲とは違い、歌詞や曲調がよりポップになっていることから、HIPHOPファンだけではなく、より広い層の若者の間でも人気になったのではないか。

以上が若者のHIPHOPトレンドの事例である。今、若者の中で個性を表現するためのひとつの手段としてHIPHOPが若者に注目されている。しかし、実態は「ワル」にはなりきれず、自分の生活にファッション感覚で取り入れる程度にとどまっている。これもまた、常にSNSで周りからの視線を感じ、世間体を気にしているZ世代の特徴のひとつといえそうだ。

原田の総評:マイルドヤンキーの7年後

今時のZ世代たちの「HIPHOPワナビー」ニーズはいかがでしたでしょうか。

私は2014年、「マイルドヤンキー」という言葉を作り、それがユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされました。

これはかつて「ヤンキー」と言われた属性の若者たちが、今は全国的に少なくなり、代わりに『悪いテイスト』に憧れるだけの、かつてのヤンキーよりもマイルドな言動になった若者たちが増えている、という意味を指す言葉でした。

あれから7年経った今、マイルドヤンキーの若者たちは、HIPHOPカルチャーへの憧れを強めています。日本のラッパーはもちろん、この数年間のSNSの普及により海外情報も多く入るようになり、海外のラッパーへの憧れも強めています。(なお、2014年の拙著『ヤンキー経済』では、マイルドヤンキーの若者たちがエグザイルに憧れていることを書いています)。

こうしたラッパーの持つ悪いテイストを自分に思いっ切り取り入れるマイルドヤンキー層にはなれない、あるいはなりたくない、でも心の底ではちょっと真似したいと思っている「ワナビー層」がZ世代の間で増えている、ということです。

このマイルドヤンキー層にも一般層にも広がる「HIPHOPワナビーニーズ」を捉え、企業の商品開発や広告プロモーションのヒントにしていくとよいかもしれません。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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