ダイエー創業家「中内潤」がいま語る父、大学、教育 流通科学大が就職率に拘らず学生に向き合う訳
中内:小学生の「大人になったらなりたいもの」の第1位が会社員。本当にそれでいいのでしょうか。このような姿が日本の現実だからこそ、大学生時代にいろいろなことにチャレンジすべきではないかという思いをより一層強めています。そこで、私たち(大学の教職員)が支えてやろうということで、さまざまな施策を講じているわけです。
「学生だから」という言葉が使えるのは大学の4年間だけです。現状を見る限り、定型のカリキュラムをきっちりとこなさないといけない高校時代に、さまざまなことに挑戦するのは難しい。失敗できるというのは大学生の特権です。そこで、「ネアカ のびのび へこたれず」というフレーズが生きてくるわけです。
親も一定の価値観しか示していない。「いい学校へ行かないと、いい会社に入れないよ」と言うのです。そうであれば、学生はおとなしくしていようということになります。ではいったい、「いい」とは何なのでしょうか。僕らが持っている価値観と時代(現在の大学生)が持っている価値観はかなり異なっています。僕たちの時代感覚では、「いい大学」に入り「いい会社」に就職するということが「いい」という価値観でした。
しかし、今は違います。学生がなりたい仕事というのは、いい大学を卒業しなくてもなれる職業かもしれません。たとえば、プロ野球の選手として大活躍しようと思えば、必ずしも東大(東京大学)を卒業する必要はない。プロ野球選手になれる大学へ行けばいいわけです。
あえて就職率を言うのをやめた
プロゴルファーになりたければ、就職活動をしなくてもいい。フリーターをしてでも好きな道を突き詰めていけばいいと考えています。ところが今や、大学が就職予備校になってしまっている。大学もいかに就職させるかということに焦点を当てがちです。何になりたいかではなく、どこに就職するかが目的になっているのです。本学は就職率が高いというイメージを持たれている大学であり、実際、そのとおりなのですが、あえて、就職率を言うのをやめることにしました。
長田:就職率という無味乾燥な数字にこだわる以前に、大学生自身がもっと自覚しなくてはならないのが「情報不足」でしょう。とくに、ビジネスに関する情報が驚くほど不足しています。私は国立、私立の複数の大学で大学生を教えてきましたが、この情報過多といわれる時代において、「それ、知らなかった」と口にする大学生がなんと多いことか。情報から得た事実を知らないから表層的な数字から派生するイメージに基づき考え、行動するのです。