ダイエー創業家「中内潤」がいま語る父、大学、教育 流通科学大が就職率に拘らず学生に向き合う訳

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偏差値による大学選択もしかりです。これでは夢も持てないし、的確な職業選択もできません。大学ですから理論を教えなくてはなりませんが、理論以前の問題として、情報のシャワーを浴びせなくてはならないのでは。そうすれば、職業意識が高まり就職率など自然に高止まりするのではないでしょうか。

中内:確かにおっしゃるとおり、大学生が持つ情報が少なすぎるというのは事実なんです。そこで、本学では、パソコンの基本操作を学ぶのと同時に、新聞を読み理解できるようにする授業も行っています。さらに、企業の人、卒業生、さらには在校生などを講師に招き、いろいろな角度から情報を与えて、将来何をしたいのか、考えさせるようにしています。

情報不足に加えてもう1つ、僕自身が授業をしていて気づいたことがあります。今の大学生はまず正解を求めるのです。社会においては、答えなどないケースが山ほどあります。ビジネスで重要なのは、理論ではなく論理性です。それを踏まえ、知識重点型から知識を知恵に変換できる人材の育成に焦点をあて、創設時より訴求し実施してきた実学重視の方針に基づき、アクティブラーニングを重視した授業内容に大変革をしていきます。つまり、授業で教え込むのはやめようという試みです。知識を与えるのではなく、考える力をつける講義に変えています。

長田:私はこれまで多くの経営者、ビジネスパーソンと対話してきましたが、「大学時代の思い出は」と聞くと、サークル活動(部活)でのエピソード、出会いについて話す方が少なくありません。サークル活動の意義については、どのように考えていますか。

本来あるべきキャリア教育に力を

中内:先ほどお話しましたアクティブラーニング重視型教育のキーとなるのがクラブ、サークルです。これらの活動を本学は支援しております。そこでの活動を通じ、ビジネスパーソンとして恥ずかしくないしつけ、ルール・マナー順守、礼儀や言葉遣い等を身につけ、どこに出ても物おじすることなく、誰とでもしっかり言葉を交わすことができ、逆境でもたくましく生きていける人材を育てます。

長田:コロナ禍でわれわれは、平和ボケしていたわが国で「逆境の中で生きる」意味を再び問い直されたような気がしております。「逆境でもたくましく生きていける人材」がVUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)の時代には、今以上に求められることでしょう。この認識も踏まえて、現在の大学の果たすべき役割は何なのか、一言でまとめてください。

中内:大学は、将来に花咲かせるための1ステップでしかありません。40歳、50歳、いやそれ以上の歳になったとき、いかに人生に花を咲かせているかが重要なのです。それは、単に仕事のうえだけでなく、生活、人生そのものを咲かせる。

そのためにも、知識を知恵に変える力、Human Network(人脈)、そして「ネアカ のびのび へこたれず」の精神が求められるのです。本来、人格形成、職業観醸成と就職活動とは異なるべきです。そう考えたがゆえに、就職率の発想をやめ、本来あるべきキャリア教育に力を入れています。就職率が悪くなったから就職率の追求をやめたわけではありません。この点は、誤解されないように広報にも力を入れていきます。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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