ダイエー創業家「中内潤」がいま語る父、大学、教育 流通科学大が就職率に拘らず学生に向き合う訳

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長田貴仁(おさだ・たかひと)/経営学者、ジャーナリスト、経営評論家。流通科学大学特任教授の他、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー、事業構想大学院大学客員教授を兼任。同志社大学卒業後、プレジデント社入社。早稲田大学大学院を経て神戸大学で博士(経営学)を取得。ニューヨーク駐在記者、ビジネス誌『プレジデント』副編集長・主任編集委員、神戸大学大学院経営学研究科准教授、岡山商大大学教授(経営学部長)などを経て現職。日本大学大学院、明治学院大学大学院、多摩大学大学院などのMBAでも社会人を教えた(撮影:今井康一)

長田:起業をするとなれば、甘い考えはいっさい許されません。実業の世界がお花畑でないことは中内さんも痛感されているはずです。ところが近年、ハラスメントが問題視されるようになり、企業だけでなく大学でもなかなか厳しい一言が言えなくなっています。現在の大学生は子どもの頃から褒められても、きつく叱られた経験が少ない。

中内:たしかに、今の学生は、ちょっと言うと、へなっとなえてしまいます。かと言って、優しい言葉をかけ、褒めるだけではその学生のためにはならない。そこで、プレゼンの審査に来ていただいた経営者には「言いたいことを好き勝手に言ってください」「思いっきりたたいてもらって結構ですから」と言って厳しい指導をお願いしています。すると、経営者たちは、本当に好き勝手に厳しく指摘されたのです。

ある学生が「カフェをやりたいのですが……」と事業計画を発表したところ、経営者から「今どき、カフェとはね。そんな店に誰が金を貸すんだ」と完全否定されました。身銭を切って大金を出すのですから、けんもほろろに言うのは当然と言えば当然です。プレゼンテーションが終わり批評されたとき、泣きそうになった学生もいました。根負けしたのかなと思いきや、それがすごく刺激になったようで、学生のほうは今度こそ、自分の事業計画を通してやるという思いが強まったようです。結果的に4人が起業しました。

学内のカリキュラムにおいても、このたび、「起業・事業承継コース」を創ったのですが、知識だけではなく経営の精神を教えることを大きな特徴としています。

まずは親の仕事の中身を理解してもらう

「家を継ぎます」「継いでもいい」「継ぎたいですね」と言う学生でも、親の仕事の中身までは十分わかっていないのが実情です。たとえば、クリーニング屋の息子は、親がクリーニング屋であることは知っていても、クリーニング事業の中身がわかっていないのです。資本金、売上高はいくら、と聞いても何も知らない。

そのような学生には、とりあえず、「家で何をやったらいいか聞いてこい」と言っています。「これほどコインランドリーが増えている中で、クリーニング屋はどうなっていくのか」といった質問を投げかけ、ビジネスモデルの革新を前提とする「ベンチャー型承継」を提案しています。

長田:起業家に欠かせない資質は、「ネアカ のびのび へこたれず」かと。流通科学大学を入ると目に入る(創設者の)中内功像にも、このフレーズが刻まれています。中内功氏が第2次世界大戦後の神戸の焼け跡から起業。その後、のびのびと事業を拡大し、へこたれず闘ってきた頑強な精神の持ち主だということは多くの人が知るところです。

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