東大生が警鐘「夢を諦めた事すら気づかない」子供 偏差値35から逆転した「ネオヒューマン」的思考

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「これからの僕は、不公平な現実に耐えることを拒否する。代わりに現実を変えてみせる。殴られて降伏させられるのも、選択肢を奪われて服従させられるのもごめんだ。弱みを強みに変えて、新たな選択肢を創造するんだ。(中略)
これからの僕は、エスタブリッシュメントの世界に攻撃されるたびに、何度だって、何度だってやり返してやる。いつか、やつらが降参するまで」(中略)
アンソニーは声を上げて笑った。この計画が大いに気に入ったらしい。再び歩き出しながら、彼は感想をひとことでまとめてみせた。
「大乱闘になるな!」
私は立ち止まった。アンソニーも立ち止まった。
「乱闘だって?」と、わざとらしく叫ぶ。「これは戦争だよ!」
『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン――究極の自由を得る未来』より

ピーターさんは60歳を超える現在まで、一貫してこの姿勢を貫き通しています。本書ではその痛快な闘いっぷりが描かれていて、やっぱりすごい人だと思います。

ただ、僕たちはなかなかピーターさんのように「戦争」なんてできません。エスタブリッシュメントに反抗なんてできないし、そういう思考は持っていたとしても、実際に行動できる人はほとんどいないのです。

僕がいま関わっている教育分野でもそうです。かつては「東大に合格するための情報は、進学校に行かないと手に入らない」という時代でした。しかし今は、インターネットで検索すれば、誰でも簡単に東大に合格するための情報を大量に得ることができます。

ところが、その変化によって、偏差値の低い環境にいながら東大に合格する人が増えたかというと、ぜんぜんそんなことはありません。

ここは実は、多くの人がエスタブリッシュメントに抵抗できないでいることと、構図が似ているのではないかと思います。厳しい状況に置かれたとき、最初から諦めてしまう。実は闘える状況にいたとしても、最初から闘うことを考えないわけです。諦めたことすら自覚しないことも多いでしょう。

そこで諦めなかったのが、ピーターさんです。本書には、苦しむピーターさんが、自分自身と向き合って対話するシーンが描かれています。どんな状況に置かれても、彼のように「それでも闘うんだ」と考えられる人はなかなかいません。

自分で無意識に引いた線を越えられるか

自分自身との対話を乗り越えられず、踏み出せない人は本当にたくさんいます。

幼い頃は、みんな「なりたい自分」がありますよね。野球選手、宇宙飛行士など自由に思い描いていたはずです。でも、中学、高校と進学するうちに、「そんなことは無理だ」と思うようになり、「なりたい自分」から線を引いて、自分を囲ってしまうのです。

自分を取り囲んだ境界線から外へ出るのは、本当に大変なことです。誰もが、その線になにか意味があると思い込んでいて、その線の内側だけで生きようとしてしまう。けれど、そんなものは幻想なんです。

そこをぶっ壊して踏み越えられることが「自由」ということだと思いますし、『ネオ・ヒューマン』を読んでますますそう感じました。

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