ロート製薬が「ボラギノール」を身内にした事情 大正製薬に追いつけ追い越せで買収意欲旺盛

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当時、販売網を持っていなかった天藤は、すでに大手製薬会社の地位を築いていた武田薬品工業(当時は武田長兵衛商店)にボラギノールの販売を委託。以来、国内屈指の販売網を持つ武田と共に成長してきた。現在でもこの体制は続いており、天藤は武田の持分法適用関連会社だ(所有比率は30%)。

今回、ロートがボラギノールを買収することになったのは、この武田薬品と浅からぬ縁があったからだった。

杉本氏はロートの社長に就く以前、武田薬品グループで大衆薬を手がける子会社の武田コンシューマーヘルスケア(現在のアリナミン製薬)で社長を務めていた。

その杉本氏の前任者として武田の大衆薬事業のトップを務めていた人物が、現在天藤の会長である大槻浩氏だった。創業家の3代目として天藤の経営に携わっていた大槻氏はその経営手腕を買われ、武田の大衆薬事業そのもののトップに抜擢されていた。

「大槻さんから仕事を引き継いだ関係があった。元々、人となりがわかっていたので声をかけてもらえた」(ロートの杉本社長)という。

武田の子会社売却が引き金

今回の買収で、創業以来100年以上続いてきた武田と天藤との協業体制に終止符が打たれる。だが、天藤にとってロートという新たなパートナーと手を組んだのは必然ともいえる。

それは、杉本氏や大槻氏の古巣である武田コンシューマーヘルスケアを武田が手放したからだ。武田は、2019年の買収で抱えた巨額負債の圧縮や新薬開発の費用を捻出するため、2020年に同社をアメリカの投資ファンドへ2420億円で売却している。

「武田が大きな方向転換をした。今までと違い、天藤にとって本気でタッグを組んでやっていける相手なのか不安になったのではないか」(杉本社長)。かといって天藤には独自で販売網を築く経営体力はない。そこで声をかけたのがロートだった。

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