ヤマハが“音楽”へ原点復帰 ピアノの頂点、スタインウェイの背中を追う
一方、目標とするスタインウェイのピアノは、オーケストラに負けない迫力と芯のある音で、世界中の演奏家から信奉され、圧倒的な存在感を放ち続ける。
多くのメーカーが中国や東南アジアへ工場を移すように、ヤマハも需要の膨らむインドネシアでアップライトピアノやギターの生産機能を増強する。だが、核となるコンサートグランドピアノの製造だけは、いかに採算が悪かろうと、断固として本社のある静岡に残す。
ショパンコンクールでヤマハが公式ピアノに
巨大な木材加工品であるピアノは、家電や車で言うところの「ものづくり」とは異なる側面を持つ。マニュアル化できる技術よりも、職人の技能に頼る割合が高い。たとえばグランドピアノの外枠。大きな婉曲部は「曲げ練り」と呼ばれる伝統的な技法で、熟練した職人にしか作れない。温湿度や木の状態、最終製品のサイズで、曲げ具合が異なる。技能を伝承するには、職人が若手とペアを組み、体で覚え込ませなければならない。100年かけて技能を洗練させながら、目指す老舗の背中を一歩一歩追いかけていく。
ショパンコンクールなど国際的なピアノコンクールでヤマハが公式ピアノに採用されてから、まだ日は浅い。コンクールの最終候補者は事前に複数の公式ピアノを弾き比べ、人生を賭ける1台を選ぶ。今では、10人中1~2人がヤマハを選ぶまでにレベルは上がってきた。だが梅村社長はまったく満足していない。「最低でもスタインウェイと半々」(5人はヤマハ、5人はスタインウェイを選ぶということ)と意気込む。
創業の精神に立ち戻ったヤマハ。演奏家の絶大なる信頼を勝ち取るまでの道程は、まだまだ続く。
(撮影:今 祥雄、週刊東洋経済2010年6月5日号)
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