ヤマハが“音楽”へ原点復帰 ピアノの頂点、スタインウェイの背中を追う

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日本でも有名なヤマハ音楽教室は、質の高い情操教育がウリだ。日本の教室で4~5歳児のグループレッスンを見学すると、一人に1台、最新の電子ピアノが用意されている。講師は生徒一人ひとりの到達度合いを確認しながらレッスンを進める。歌、合奏、発表、音当てクイズとメニューは分単位で構成され、子供たちは飽きる暇がない。講師は採用試験に合格した音楽大学出身者。研修後、教室に送り込んでいる。

だが、インドネシアの教室では、つい最近まで格安料金を仕掛けてくる現地の教室に負けていた。なぜか--。ヤマハが持っているはずのブランド力が弱体化していたのだ。

現地代理店の反発を押し 音楽教室の底上げ断行

3年前に赴任した山田俊一・ヤマハ・インドネシア社長(当時)は、ディーラー(販売店)による教室を回ってみて、合点がいったという。

黒ずんだ外壁に、ペンキの剥げかけた看板。窮屈に並んだ電子ピアノは20年前の製品で、床には楽器のケーブルがむき出しだ。肝である講師の研修は形骸化していた。世界の「YAMAHA」を生かすどころか、ブランドを貶めるありさまだった。

そもそもの原因は、低すぎる料金設定にあった。教室の月謝をマクドナルドのビッグマック(小売価格)に換算すると、日本が26個分、タイ22個分であるのに対し、インドネシアは11個分とほぼ半額だった。ディーラーの儲けは、設備更新もままならないほど小さかったのだ。

富裕層はもちろん中間層でさえ、教室の低品質をよしとしなかった。家電と違い、子供への投資は「価格」よりも「品質」。ヤマハは、消費者のニーズを読み違えていた。

「国内のすべての教室を改装し、講師には研修を受けてもらいます。月謝は2倍に値上げします。方針に賛同いただけないディーラーは、3年間の猶予の後、教室運営の権利を消失することになります」

山田氏の突然の宣言に、「倍の料金で客がついてくるはずがない」「投資は回収できるのか」とディーラーの猛反発が湧き起こった。

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