英国の小学校「超厳格コロナ対応」から学べること 消毒に次ぐ消毒、一定の距離確保などを徹底

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もともと学業に遅れがちな生徒だったので、本当に気がかりです。その子は来年度から中学校に進学しますが、イギリスでは留年の制度が基本的にないので、2年分遅れたまま進学しなくてはなりません。本人もつらいでしょう。

学校として可能な限りサポートしますが、あとはソーシャルサービス(自治体の福祉部門)の範ちゅうになってしまいます。最悪、警察が関わってくる可能性もある。

この子のケースでは、保護者が生徒を学校に行かせること拒んでいます。きょうだいもいて、全員が学校に通っていないんです。学校が安全とされて、通学が義務づけられている環境において、通学を拒否することはできません。

心配なのは現在よりも2~3年後

――コロナ禍の子どもたちには、どんな影響が出そうでしょうか。

現在のことではなく、むしろ2~3年後が心配です。コロナ以降、例えば、4~5歳児はほかの子どもたちと接して社会性を育む機会がなかったわけです。その子たちが1年生になったら、どんな行動を示すのか。メンタルヘルスや感情面はどうか。6カ月後ではなく、6年後にどういう影響が出てくるのか、まったくわからない。

学校が再開しても、ソーシャルディスタンスの関係で1つのグループは3人まで、互いの物や身体には触れてはいけないという環境は続きます。

ですから、社交性や社会性、他者との関係性に大きな変化がある。明らかにこれまでと違ってくるわけです。あらゆる点において、長い目で見ていく必要があります。ロックダウンが終わったから、予防接種が終わったから、それでいいということではありません。

家計の変化という問題もあります。教師は生徒を中心に見ていますから、保護者の経済状況まで詳しくフォローしていません。この間、仕事を失った人もいるでしょう。それに6年生ともなると、両親の話に耳を傾け、理解しています。子どもたちも私たちの想像が及ばない部分で、いろいろなことを考え、不安に思っているはずです。教師は状況に柔軟に対応して、ときにはカウンセラーの役割を担っていく必要があると思います。

取材:越膳こずえ=フロントラインプレス(FrontlinePress)

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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