2013年がんで逝った男がネットに刻み付けた言葉 没後8年、永久保存を望んだサイトは3年で消えた

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「クール!だね、ジャパン」を残したのは、冒頭にあるように「多少は元気が出るか」との思いからだ。完全に闘病にスイッチを切るより、元気だった頃の日常をささやかに残しておいたほうがいいという判断なのかもしれない。

そうであるならば、「クール!だね、ジャパン」を「数日後には削除」できなかったことにはあまり大きな意味はないはずだ。いつかは処分するつもりで手元に置いたままになった愛用品と変わらない。存在が残っていようが消えていようが問題ない。

「女子アナデータベースの最終形。この画面のまま3年公開されていた(Internet Archiveより)

やはり「どうしても削除できない、10年来運営している永久保存のサイト」である「女子アナデータベース」だけは、明確に未練として残したのではないかと思う。

インターネットに永久不滅はない

小田和さんの気持ちが通じたのか、更新停止から3年経つ頃までは「女子アナデータベース」は確かに存在していた。しかし、利用していた無料ホームページサービス「@homepage」が2016年11月10日に終了したことで永久保存の望みはついえた。

@homepageはニフティが1999年に提供を開始。2000年前半のピーク時にはおよそ34万、累計で60万件弱のホームページを抱えてネット黎明期の一翼を担ってきた。サービス終了を告知して半年経った2013年9月時点では約16万件のサイトが残っており、大半はそのまま消滅したとみられる。

そもそもインターネット上のドメイン(住所)の永久所有は不可能なので、オンラインで永久保存を求めること自体難しい。数10年スパンで見積もっても、自前のサーバーに移設して永続的な管理を誰かに頼むか、長期間の契約でレンタルサーバーを使い、その後の支払い方法や管理方法に道筋を付けるしか、確実性を増す手段はない。

運営元の状況次第でいつでも消える可能性のある無料サービス上に、バックアップもなく、ただ置いておくのは、流氷の上に漂わせるのに等しい。10年や20年も浮かび続ける流氷も確かにあるが、多くは数年で沈んだり解けたりしてしまう。それくらい不確かな足場だ。

実際、「クール!だね、ジャパン」が残っているのはGoogleがブログサービス「Blogger」の提供を“たまたま”続けているからにすぎないし、気軽に過去のアーカイブがたどれるのも、Internet Archiveが“たまたま”サイトの自動収集と公開を続けているからにすぎない。

人気サイトを目指してたくさんの関連本を読んでいた小田和さんはこのことをよく知っていたのかもしれない。そのうえで、あえて家族や友人に託す手段をとらなかったのか。あるいは、本当のところは永久保存を期待しておらず、ただ、自らの手で10年来の成果を消失させたくなかっただけなのか。答えはわからないままでいいと思う。

古田 雄介 フリーランスライター

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ふるた ゆうすけ / Yusuke Furuta

1977年生まれ。名古屋工業大学卒業後、建設会社と葬儀会社を経て2002年から雑誌記者に転職。2010年からデジタル遺品や故人のサイトの追跡している。著書に『第2版 デジタル遺品の探しかた・しまいかた、残しかた+隠しかた』(伊勢田篤史との共著/日本加除出版)、『ネットで故人の声を聴け』(光文社新書)、『故人サイト』(社会評論社)など。
X:https://x.com/yskfuruta
 

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