国内6大銀行グループ、前期は株式関係損益や与信関係費用減で業績好転も、今後は与信費用増と実質業務純益減がリスク要因に《スタンダード&プアーズの業界展望》

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金融機関格付部
主席アナリスト 吉澤亮二

大手銀行6グループ(三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、りそなホールディングス、住友信託銀行、中央三井トラスト・ホールディングス)の前2010年3月期連結決算は、純損益の合計が1兆1319億円の黒字となり、09年3月期の1兆1794億円の赤字から大きく改善した(以下、計数は6グループの合計値、比率は加重平均値)。

市況の回復により株式関係損益が大きく改善したことや、与信関係費用が減少したことが主因である。市場関連取引を含む基礎的な収益力を示す実質業務純益(粗利益−経費+持ち分法による投資損益)は、好調な市場関連取引を反映して同9.5%増加したものの、安定収益となる国内預貸部門では利ザヤが縮小し、貸出残高も減少するなど、課題が残る結果となった。

手数料収入(役務取引等利益+信託報酬)は、ほぼ前の期並みの水準となった。与信関係費用は、銀行単体ベースでは管理可能な水準に低下してきたが、ノンバンクを連結子会社に持つグループでは、連結ベースの与信費用率が高止まっている。

自己資本の状況は、普通株での増資や公的優先株の普通株転換により、質量ともに大きく改善した。全般的な決算内容はおおむねスタンダード&プアーズの予想の範囲内であり、各社の現在の格付けで許容できる範囲にあった。

スタンダード&プアーズでは、現時点では大きな信用力への圧迫要因ではないものの、今後、(1)国内外での与信関係費用の増加、(2)基礎的な収益である実質業務純益の減少--がリスク要因になる可能性があるとみている。

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