国内6大銀行グループ、前期は株式関係損益や与信関係費用減で業績好転も、今後は与信費用増と実質業務純益減がリスク要因に《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 与信関連費用については、国内では消費者金融会社を傘下に置くグループにおいて、広義の与信費用(連結与信関係費用と、持ち分法による投資損益に影響を与える持ち分法適用子会社の与信関係費用)の動向が不透明で、6月の改正貸金業法の完全施行の影響は予想が難しく、総量規制の導入などにより、グループの消費者金融各社で同費用が増加する可能性がある(ただし、銀行本体が行う個人向け貸し出しは、改正貸金業法による総量規制の対象外)。

また、各種の経済指標から、国内の景況は全般的に回復基調にあるが、中小企業セクターの業況回復の遅れが、同セクターでの与信費用の増加につながる可能性もある。

現時点では制度保証融資の拡大、中小企業金融円滑化法などの措置により、大手行グループは、今後の抜本的な業況改善計画の達成を前提に、中小企業向け与信の一部を不良債権として認識していないため、同セクターに関する与信費用を一時的に抑制している可能性が高い。そのため、同セクターの業況回復がさらに遅れれば、業況改善計画の達成困難が判明した段階で、与信関係費用が突如発生するリスクがある。

海外向け与信については、6グループはギリシャなどの財政状況が悪化している南欧のソブリンに対する与信額をほとんど持っていないため、これら諸国の民間部門への与信額も極めて限定的である。しかし、経済の混乱がより広範囲の国(各国の銀行セクター)に拡大するようであれば、各グループは一定の影響を受ける可能性があると考える。

全般的な資産の質を表す指標では、貸倒引当金控除後のネット不良債権比率は0.67%と低位に維持されており、償却債権取立益考慮後の与信関係費用も1兆5814億円と、09年3月期の73%の水準に低下した。ただし、貸出残高に対する与信関係費用の比率は、59ベーシスポイント(bp)と、09年3月期比22bp低下したものの、ノンバンク子会社の影響もあり、引き続きやや高めの水準にある。

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