コロナ禍で「日本の正規雇用」33万人も増えた訳 統計が示す「コロナに強い」業種と地域とは?
正規の増加、内訳をみてみよう。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
全体 | -4万人 | +36万人 |
うち15-64歳 | -9万人 | +36万人 |
うち65歳以上 | +6万人 | +1万人 |
出所: 労働力調査(総務省)基に筆者作成 注:表記数値は四捨五入後の数値
つまり、正規職員・従業員数増加の牽引役は、15-64歳の女性だった。では、15-64歳女性の正規がなぜ36万人も増えたのか。そのカギはコロナ禍の長期化にあった。
産業別の就業者数をみると、「医療福祉」が868万人で17万人(男女計)と最大の増加を示している。このうち自営と役員を除く女性の正規雇用者増加は12万人だった。
さらに、2021年5月分を見ると、「医療福祉」の就業者数は892万人にまで増え、前年同月比で51万人の大幅増となっている。このうち女性の正規雇用者は374万人で、前年同月の351万人よりも19万人増えているのだ。
コロナ禍の長期化で人手不足が顕著となった看護師や介護関連など、医療、介護現場で女性の正規雇用が大幅に増えたものとみられる。
有効求人倍率(求職者1人につき、何件の求人があるかを表す数値)のデータを見ると、2020年度は、医師・薬剤師等2.20倍、保健師、助産師、看護師1.99倍、医療技術者2.63倍など、医療関係は全体(職業計1.01倍)を大きく上回っている。逼迫する医療現場のニーズが、正規雇用を増やしたのだろう。
2割の病院が「離職率2割超」
ただ、正規雇用の看護職員の離職率が20%を超える病院は21.2%(2019年度、日本看護協会調べ)にのぼり、また、人口10万人当たりの就業看護師数でみると、全国平均963.8人に対し、コロナ感染者数の多い東京は792.3人しかいない(2018年末現在、衛生行政報告例)。「夜勤などハードな勤務内容ゆえ慢性的に人手不足だったが、コロナで拍車がかかった。そこにワクチン接種の人材も必要となり、需給は逼迫している」(医療業界関係者)。
これは介護現場についても同じことが言える。介護サービス職の有効求人倍率は3.37倍で、全業種平均の0.94倍を大きく上回っている(2021年5月)。「医療福祉」分野で女性の正規雇用が増えた背景には、切実な人手不足状況があるのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら