「話す、聞く」を重視し過ぎる英語習得の落とし穴 英語は「話せないけど読める」という人の大誤解

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英語話者向けのニュースで、キャスターやリポーターは英字新聞に近いレベルの英語を1分間に約150~200語のスピードで話しています。新聞記事を1分間に70~100語しか読めないとすれば、ついていけなくて当然なのです。

逆に言うと、読むレベルが分速150語以上になってくれば、かなりリスニングも楽になるでしょうし、分速200語で標準レベルの英文が読める人がまったく聞き取れないということは、そうそうないと思います。

偏りを強みへ

このように書くと、「要するに、受験勉強で必死に英語を読む訓練をしても、全然身についていないということではないか。力がそんなにないうちから、レベルに合っていない英文を解剖するように読む訓練をするから、そういう遅い読みになってしまうのだ。やはり、バランスの悪い学習法なのだ」という感想を持つ人もいるかもしれません。

確かに、受験勉強では学習者の英語力を大幅に超えるレベルの英文を、丹念に時間をかけて読む訓練をするのが普通です。やや偏りがあるということは否定できません。ただし、この偏りは、見方を変えれば強みでもあるというのが私の考え方です。

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なぜなら、英語圏での長期滞在などによって、環境の中で自然と英語を身につけ、シンプルな英語でのやりとりには特に困らないという人がよく行き詰まるポイントが、実は大学入試問題に出題されるような英文読解だからです。

彼らがこのレベルから先に進むには、感覚的にある程度身についている英語について、改めてイチから勉強しなおさなければならず、大変な苦労を要するのです。

一方、受験勉強などを通じて、基本的な文法力、読解力を身につけた人は、スピードや語彙力の問題ではまだまだトレーニングが必要なものの、習得に苦労を要する「英語を正確に理解するスキル」がかなりの部分まで身についています。

これは中級以上の英語力を目指すうえで大きなアドバンテージです。日本で教育を受けてきた人なら、読解力の基礎を強みとして他の能力にも応用していくほうが、そこまでのやり方をすべて捨てて、突然英会話の練習をするよりはるかに効率がよいと思います。

北村 一真 英語学者

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きたむら かずま / Kazuma Kitamura

1982年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学生時代に大学受験塾にて英語講座を担当。滋賀大学などの非常勤講師を経て杏林大学外国語学部助教。 2015年より同大学准教授、中央大学法学部兼任講師。著書に『英文解体新書』『英文解体新書2』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)など。

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