「話す、聞く」を重視し過ぎる英語習得の落とし穴 英語は「話せないけど読める」という人の大誤解

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これには、次のような反論があるかもしれません。

「時間をかけて辞書を使えば、新聞記事などもそれなりに意味はわかる。しかし、ニュースで言っていることや映画のセリフなどはさっぱり聞き取れない。やはり、読む力のほうが聞く力よりはるかに高いということではないか」

このような感覚が、「読めるけど聞けない、話せない」というイメージを支えてきた側面があると思われます。しかし、この感覚は必ずしも正しいとは言えません。

何をもって「読める」とするのか

結論から言えば、そのような感覚は「読む」ことに対する基準と、「聞く」ことや「話す」ことに対する基準がまったく異なることから生まれる、一種の錯覚です。

例えば、大学入試の長文問題を制限時間内に解き、正解率が高かった人はその長文が読めたと感じるでしょう。これ自体は間違いではありません。

しかし、英語話者の読解スピードと言われる「1分間に200語(センター試験のすべての英文を20分強で、語数の増加が話題になった共通テストの英文でも約30分で読み終えるスピード)」という基準から見ると、大半の人は恐らく半分以下(場合によっては3分の1以下)のスピードでしか読めていないと思います。

これを「読める」とするのであれば、ニュースの報道や映画のセリフを半分以下の速度、3分の1の速度で言ってもらえれば聞き取れる、という状態も「聞ける」と見なさなければなりません。

ところが、上のように「読めるけど聞けない、話せない」という感覚を持っている人は「聞ける」や「話せる」のほうにはネイティブスピードやそれに近い基準を当てはめる傾向があるように思えます。

つまり、「日本人は読めるけど聞けない、話せない」という主張は、「日本人はネイティブスピードの半分以下の速度でなら読めるけど、ネイティブスピードで会話はできない(聞けない、話せない)」という、いたって当たり前のことを言っているにすぎないのです。

4技能における相対的な力の差についての表現としては、とても大雑把なものです。このような認識を基準に、学びの力点の配分を考えることはナンセンスであると言わざるをえません。

意外に思われるかもしれませんが、ニュースや講演のように、話者が聞き手を意識してはっきりと話している英語を聞き取れないとすれば、実際は発音や耳の問題だけではなく、読解力も原因だと考えてほぼ間違いありません。

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