軽視される「家庭科」を学ぶ意義はどこにあるのか 調理や裁縫に加えて、資産形成も教えるように
家庭科の授業が、調理実習と裁縫だけと思っている人は、認識が古いかもしれない。2022年度から始まる高校授業の新学習指導要領では、何と資産形成の視点に触れるように規定している。株式や債券、投資信託など、基本的な金融商品についても教えることになるのだ。なぜ家庭科の守備範囲が、資産形成まで教えるほど広くなっているのだろうか。
高校の常勤家庭科教師のAさんは、資産形成について教えることには戸惑いがあると明かす。「株式などについては社会科でもやりますが、家庭科では自分事として具体的に、何を選ぶかなどを考えることになります。私は投資の経験が一つもないのは不安なので、とりあえず証券会社に口座を開きました。教えるために投信を始める、と言っている先生もいます」。
Aさんが使用する第一学習社の家庭科教科書には、「将来の経済生活を考える」という項目がある。家計や貯蓄、私的保険について解説。金融商品の選び方、というコラムはあるが、具体的な金融商品についてはまだ記されていない。
子育てから介護、民法、ライフプランまで
実はすでに、家庭科の守備範囲は相当広くなっている。
「家庭科はすべての分野について、家の中にあるものを教えることになる。すでにいろいろなものを引き受けているんです」とAさん。勤務する高校では、2年生の際に1年間しか教えられないので、「教科書の内容を、一通り教えるようにしている。衣食住はもちろん、子育てプログラムや高齢者の介護体験、家族形成、民法、そしてライフプランの教え方までを、週2コマ1年間で教えなければなりません」
Aさんは、「私は3年前に現在の学校に着任したのですが、前任の先生は保育や被服は教えていませんでした。その先生に教わった生徒たちは、調理実習や家政経済、家族についてしか学ばなかったのです」と明かす。盛りだくさんすぎるとはいえ、教育内容が教師によってばらつきが出ても大丈夫なのだろうか。
資産うんぬん以前に、さまざまな負担を抱える家庭科。しかし、大学受験にはかかわりないことから、現場では軽視される傾向がある。Aさんは常勤だが非常勤講師も多い。家庭科にはそもそもどういう役割があり、なぜこんなに負担が大きいのか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら