「すり替え作戦で育児」双子パンダ誕生の舞台裏 育児放棄も起きる「簡単ではない」子育て事情

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交尾も出産も、2020年9月にオープンした新パンダ舎(参照:『シャンシャンに弟妹?上野「新パンダ舎」の底力』)では初めての出来事だ。新パンダ舎は、幼い双子のパンダを同室にした場合などだが、最大で6頭のパンダが暮らせるようになっている。

今回の双子は、2つある産室のうち「産室2」で生まれた。広さは10㎡で、間に扉があり、シンシンは自由に行き来できるようになっている。野生のパンダは、樹洞や岩穴などに枝や草で巣をつくり、そこで出産するので、飼育下でも産室はあまり広くしない。新パンダ舎の産室は、公道の「動物園通り」に近いが、防音対策を施しているので問題ない。

また、新パンダ舎の屋外エリアの一部では、ガラス越しでなく、パンダをじかに見られる。リーリー(近くにいるシンシンが子育てに専念できるように、リーリーも公開中止)がこのエリアにいた時は、鳴き声や竹を割る音まで聞こえた。将来、双子をじかに観覧できる日も来るかもしれない。

双子が中国へ行く日は未定

上野動物園の福田豊園長は、赤ちゃん誕生を楽しみにしていた人たちへのメッセージとして、

「中国の専門家の来日が難しいことや、新しい施設で使い勝手に習熟してないことなど、不安材料はたくさんありましたが、なんとか無事に出産ができ、かつ、初めての双子ということで、とてもうれしく思っています。これからしばらくは24時間体制で見守り続ける状況が続きますが、どうかあたたかく見守っていただき、2頭の成長を楽しみにしていただければと思います」と会見で話した。

6月23日午前10時半から上野動物園の福田豊園長らが園内で会見(写真:筆者撮影)

東京都と中国野生動物保護協会(CWCA)の協定では、現在、上野動物園にいるパンダ5頭の所有権は中国側にある。双子は将来、繁殖に向けて中国へ旅立つ予定だ。

都によると、双子は2歳から4歳になるまでの間に中国返還となる。具体的な日程は、都と中国側の双方で協議して決めるという。

上野動物園の歴代のパンダたちは中国から無償で贈与されていたが、2011年2月に来日したリーリーとシンシンからは貸与となり、都は中国側にパンダの保護研究費を支払っている。その額は年95万ドル(約1億円)だとこれまでに都が明らかにしていた。だが、今回の双子の誕生後に金額を都に尋ねると、中国側との取り決めにより、金額は非公表になったとのことだ。

双子は、上野で生まれたパンダとして6頭目と7頭目に当たる。1980年代には、中国から贈られた雄のフェイフェイ(飛飛)と雌のホアンホアン(歓歓)の間に、人工授精で3頭が誕生した。実は、この両家族の構成は不思議と似ている。

第一子は、1985年6月に生まれたチュチュ(初初)と、前述の2012年に生まれたパンダ(名前はない)。どちらも雄で、生後間もなく死亡した。

第二子は、1986年生まれのトントン(童童)と2017年生まれのシャンシャン。どちらも雌で、日本にパンダフィーバーを巻き起こした。

第三子と第四子は、1988年生まれの雄のユウユウ(悠悠)と2021年生まれの双子で、この3頭はなんと同じ6月23日生まれだ。

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