「すり替え作戦で育児」双子パンダ誕生の舞台裏 育児放棄も起きる「簡単ではない」子育て事情

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パンダの生後1週間は「魔の1週間」と呼ばれるほど、命を落とす危険がある。上野動物園で2012年7月に生まれた雄の赤ちゃん(シャンシャンの兄)は、生後6日で生涯を終えた。双子のうちの1頭が生後間もなく死に至るケースも珍しくない。そのパンダは衰弱した状態で生まれ、手の施しようがない場合が多い。

和歌山県のアドベンチャーワールドでは、これまでに7組の双子が誕生しており、このうち2頭とも無事に育ったのは5組だ。2005年生まれの雄の幸浜(こうひん)と2018年生まれの雌の彩浜(さいひん)も、それぞれ双子だったが、もう1頭は生き延びられなかった。

コロナで中国から専門家が来られない

現在、上野動物園でパンダを担当する飼育職員は8人、獣医師は5人だ(ほかの動物と兼務)。飼育職員の中には、中国で研修を受けた人もいる。双子の誕生時は、飼育職員と獣医師が計9人いて、うち半数がシンシンの周りを囲み、半数がモニター室で観察していた。出産直後は叫び声があがることもなく、皆、冷静だったが、その後、うれしそうにしていたそうだ。

上野動物園によると、1980年代に上野動物園で3頭のパンダが生まれた時は、中国から専門家が来日していない。だが近年は、中国国外でパンダが生まれる場合、その国に中国から専門家が来て、サポートするのが一般的だ。2017年のシャンシャン誕生時は、中国ジャイアントパンダ保護研究センター(CCRCGP)から専門家が来ていた。

しかし現在は、新型コロナウイルス禍によって、中国から専門家が来られない。アドベンチャーワールドでは、これまでに17頭のパンダが無事に生まれ育っているが、2020年11月に雌の楓浜(ふうひん)が生まれた際は、初めて日本人だけで出産に臨み、成功した。上野動物園も無事、双子を出産させることができた。

今後の中国からの専門家来日について、6月23日の記者会見で筆者が尋ねたところ、「来られないことを前提に態勢を組んでいます。現在は、中国側とテレビ会議システムなどを使って、密に連絡を取り合い、知見をいただきながら、対応していこうと思っています」(上野動物園の大橋直哉・ 教育普及課長)という。

国内のほかの動物園との連携については、「出産にあたっては、アドベンチャーワールド様にいろいろアドバイスをいただきました」(同)とのことだ。

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