テレビ局「唯一の女性社長」意外なスタート地点 彼女が後輩の女性たちに一番伝えたい事とは?

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「テレビ局は、制度では男女が平等と感じます。ただ昇進について感じるところはあります。評価方法は数値で決まっていますが、あるレベルからはノールール。そこに差が出るように思えます。でも性別がその理由になっていると証明はできません。測れないものを排除するためにも役員の数を出したかったのです」

任用抜擢に男女で差があるのではないか。それを明示するために、全体の女性割合と役員の女性割合の差を調べた、という論理だ。

一方で、いまテレビ番組がジェンダー視点で問題になるケースが出てきた。その解決には「ほめてもらう」ことも必要ではないかと岸田氏は言う。

「いま、テレビ番組がジェンダー的な問題を起こすと大炎上します。悪いことばかり目につくのは仕方ないでしょう。でも、ほめてもらうことのほうが改善にはいい気がします。ジェンダー的にバランスがとれたコンテンツを作るのはバランスが取れているチームだったりすると思います。例えばジェンダー平等視点で、良いコンテンツだと思ったら視聴者からリアクションをしてもらえると、番組作りやチーム構成が良い方向に向かうのではないでしょうか。いま、すごく反応を気にして番組を作ってますから」

テレビ局の課題解決に、視聴者の声をもらうとうれしい、という切なる願いだ。

民放テレビ局で唯一の女性社長とは?

ところで先のリリースを見ると、女性役員が少ない中で女性社長が1名だけいると書かれている。どんな方か、どうして社長になったのかを知りたくなった。

新潟テレビ21はテレビ朝日系列の地上波局だ。調べると社長の桒原(くわはら)美樹氏はテレビ朝日から赴任して社長になったとわかった。ローカル局にキー局から役員や社長が赴任するのは珍しいことではないが、女性の例は初耳だ。取材をお願いしたところ、快諾いただけた。

テレビ朝日の知人に聞くと、桒原氏は「女性で初めて」を切り開いてきた人だという。バリバリのキャリアウーマンを想像して緊張したのだが、Zoomでお会いしたのは自然体で気さくな女性だった。ホッとしつつ、入社から社長就任までの経緯をうかがった。

女性社長として取材を受けることについて「最初にお伝えしておきたいのですが」とこんなことを言った。「女性で初めて営業を担当し、いまは女性唯一の社長です。自分が失敗することで後輩の選択肢を減らすことにはならないように努めてきました。こんなこともある、くらいに女性のみなさんが受けとめてくれて、モデルの一つになればいいなと思います」

この取材も後輩の女性たちのために受けてくださったのだと思う。ぜひ最後まで読んでもらいたい。

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