インフレは続かずFRBの利上げ観測も再び遠のく 持続的なインフレのカギを握るのは賃金の上昇

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ペントアップディマンド(繰り越されていた潜在的需要の爆発)も高いインフレ率も予想されていたことではあったが、供給制約もあってFRBの予想を超えるものだったようだ。FOMCの経済見通しの中央値を3月と6月で比較すると、2021年の実質GDP(国内総生産)成長率は6.5%から7.0%へ、2021年の個人消費に関わるコアインフレ率は2.2%から3.0%へ上方修正された。22年については実質GDP成長率が3.3%で変わらず、個人消費のコアインフレ率は2.0から2.1%に持ち上がっている。

アメリカ経済が専門のみずほリサーチ&テクノロジーズの小野亮プリンシパルは「パウエルFRB議長は、4月のFOMC後の会見でテーパリングについてまだ議論していないと語ったが、5月に議事要旨が公開されて、議論を開始していたことがわかった。今回も利上げについては話し合っていないとしているが、ドットチャートの急変を見ると信じられず、7月7日に公開される6月会合の議事要旨が注目される」と話す。

一方で、経済指標については、ここから先は、旅行や行楽などのサービス需要が伸びても、家電製品やIT関連機器などの巣ごもりによる財の需要は剥落し、耐久消費財など先食いした分も下押し圧力になることが予想される。実際、高い伸びを示してきた住宅着工も4~5月は鈍化し、小売り売上高も5月は3カ月ぶりに前月比で減少となった。

FRB見通しは再度修正を余儀なくされる

小野氏は「FRBはタカ派すぎると思う。秋口にかけてインフレ率が下がっていけば、当然、FRBの見通しも9月に修正されてくる。2021年のインフレ率は下振れリスクがなくなり昨年の反動で高止まりするとしても、ベース効果だけなら1年経てば落ち着く。FRBが思い描くようなその後も上昇を続けて2%を超えていくところまでは、いかないと見ている。コロナ前の好環境でもインフレ率は1.7%しかなかった」と指摘する。

BNPパリバ証券・経済調査本部長の河野龍太郎氏は「市場は先走りすぎ。結局はシーソーゲームで、こうしたことが起きると、株価も下がって、金利も低下する。モノの需要が減速し、中国の輸出も落ちてきている。指標次第でFRBの姿勢も市場の見方も変わる」と話す。

さらに、注目するのは新興国リスクだ。「先進国はモノの需要が剥落してもサービス需要が回復するからいい、という発想だが、ワクチン接種が遅れていてモノの生産に頼っている新興国からは資金流出が起きている。新興国のリスクを考えるとFRBの動きも修正を余儀なくされる」(河野氏)。

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