「全裸監督2」ラストまで絶対に見逃せないワケ シーズン2で完結する「村西とおる」半生物語

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運にも周りからも見放される村西がとことん追い込まれていく姿は最大の見せ場でしょう。「村西が最も恐怖におびえる瞬間」を作り出すことは武監督がシーズン2でこだわった点だと言います。演じた山田自身が「孤立を感じた」と話していたそうで、それがなお一層リアリティを生み出していたのだと思わずにはいられません。

「もう一度シーズン1を観たくなる」

シーズン1の配信直後の2019年9月にNetflix日本の有料会員数が「ざっくり300万に上る」と発表され、このタイミングがNetflix日本から初めて明かされた会員数の公表となったのは『全裸監督』という成功例を作り出したことが大きかったはずです。日本のみならず、韓国やインド、タイなどアジア各国で人気トップ10入りを果たし、好循環を生み現在の500万会員数に繋がっていったとも捉えることができます。

万全のコロナ感染拡大予防対策が講じられたシーズン2の撮影現場。「これほど緊張感が途切れず長く続いたことはなかった」と話す武正晴監督(写真左)と山田孝之(写真:Netflix)

ヒット作であるだけに、シーズン2で完結してしまうのは勿体ない気もします。そんな視聴者心理をそのまま武監督に伝えると、「最後まで見てもらうと、もうこれ以上はいいやって思いますから(笑)」と、まずは肩透かしを食わされました。そして、続いたのがこの説明でした。

「ラストカットを観たら、もう一度シーズン1を観たくなるように、そう作っているんですよ。シーズン1はあくまでもイントロダクションであって、村西やトシ、川田、黒木らをドラマとして見せていったのがシーズン2なんです」

村西に限らず、働くこと、生きることに自己投影できた登場人物がいればいるほど、まんまと制作の狙いにハマってしまうかもしれません。シーズン2では玉山鉄二が演じた川田や伊藤沙莉が演じた順子が視聴者との距離を縮めさせる役柄だと思います。

気になるラストのシーンは「無事に撮影を完了させる」という想いが集約された場面でもあることがわかりました。というのも、撮影途中の3月の時期に世界中が新型コロナウイルス流行に伴ってロックダウンに見舞われたことが影響し、万全な予防対策体制を構築するまで一度、撮影中止に追い込まれたことがあったからです。その後、Netflixが世界に向けて打ち出した対策ガイドラインを指標にしつつ、日本独自のガイドラインを決めたことで、撮影が再開された経緯があります。30年のキャリアの中でも「これほど緊張感が途切れず長く続いた現場はなかった」と武監督が話す言葉を聞くと、接触するシーンが多いだけに実現できたことに驚きすら覚えます。

「コロナの時代にこんなことをしているのは地球上で俺たちぐらいだよ」と、キャスト、スタッフに武監督が呼びかけ、撮影が始まったというラストのシーン。そこで山田が渾身の演技で放つ劇中の台詞はなんとも憎い。見届けないわけにはいきません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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