ANA羽田―名古屋、32年ぶり復活のワケ 山口宇部減便と名古屋就航の"パズル"を読み解く

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しかし、事実上は1日6往復になる。同じタイミングで、スターフライヤーが羽田―山口宇部線を1日3往復で就航するからである。スターフライヤー便はANAとの共同運航(コードシェア)となり、原則、ANA便として予約ができる。

黒を基調とした革張りシートや広めの座席、オリジナルコーヒーなどサービスに定評のあるスターフライヤーは、ANAやJALよりも安い運賃で競争力もある。ANAにとって、羽田―山口宇部でJALに対抗する力を高める戦略にもなる。

実質的な支援先

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スターフライヤーは羽田―福岡線の過当競争で赤字に陥った(撮影:梅谷秀司)

スターフライヤーは羽田―福岡線を現状で1日10往復飛ばしている。2013年春の羽田発着枠の拡大に伴って大幅増便したが、結果的に過当競争に陥り、採算は悪化。2014年3月期に30億円の営業赤字へと沈む一因となった。

この採算を改善するため、羽田―福岡は1日7往復に減らす。その3往復分の発着枠を羽田―山口宇部に振り替える。その分、ANAは羽田―山口宇部を2往復分減らし、羽田―中部に貴重な発着枠を振り向けられる。

業績悪化の責任を取って、スターフライヤーでは米原愼一前社長が2014年3月末で辞任。ANAから4月に転籍となった松石禎己氏が6月の株主総会を経て新社長に就いた。ANAは財務や企画などの部門にも人員を送り込んでいる。

ANAからスターフライヤーへの出資比率は2割未満で子会社ではないものの、業務面で強い結びつきがあり、実質的な支援もしている。今回の羽田―名古屋線復活は、ライバル2社への「対抗策」であると同時に、支援先の「救済策」という側面もある。二兎を追うANAの巧妙な戦略は吉と出るか。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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