高級ブランドも参戦!「表参道」不動産争奪の内幕 閉店中のオリエンタルバザーはフェンディに?

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「この歩道橋を境に雰囲気がまったく変わってしまう」と、ある高級ブランドの幹部は話す。複数の高級ブランドが当局を説得してこの醜悪な歩道橋を移動してもらおうとしたが、近くに学校があり、子どもたちが大通りを渡るのに必要だから、という理由で警察に拒否されたという。

シャネルなどが入居するジャイルビルとラルフローレンを結ぶように立っている歩道橋(写真:東洋経済オンライン編集部撮影)

また、表参道そのものは繁栄しているが、大通りの裏側まで繁栄しているわけではない。近隣の通りでは、商業地区画が複数空いている。表参道と宮下公園をつなぐキャットストリートでさえ、多くの商業スペースが借主を募集している。

高級ブランドの不動産仲介を手がける人物はこう明かす。「以前、この辺りで店の場所を探していた時は3区画を案内されたが、最近は25区画も案内された」。

今後の課題は住民の高齢化

50年前、多くの若いクリエイターが、「裏原」と名付けられたこの通りでキャリアをスタートさせた。だが、そうした人たちの多くは年をとり、後継者がいるわけでもない。

「今はこの地区は若いクリエイターにとって値段が高すぎる」と、現在はシュウ・ウエムラの旗艦店が入居している場所を管理する、イベント・スペースプロデューサーの西本将悠希氏は嘆く。「今後重要なのは、これらの通りの価値を持続可能な形でどう高めるかだ。戦略を立てる必要がある」。

こうした周辺の通りの今後の価値を考える上で脅威となっているのが、住民の高齢化だ。表参道の強みの1つは、実際に多くの人が住んでいることだが、将来的にはこれが裏目にでる可能性がある。松井氏は、「相続税が高額になるため、土地を子孫に引き継げないことが多い」と憂慮する。

表参道のコミュニティ自体は依然盤石ではある。キャットストリートにあるビルの地下に拠点を構える商店街振興組合も力を持っている。だが、松井氏は高齢化によって、表参道の精神が失われるのでは、と危惧する。「表参道のケヤキ並木はかつて住民が自分たちのお金で植えたものなんだけどねぇ」。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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